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健康

性欲減少だけじゃない!「男の更年期」が起こす体の不調あれこれ

文/緒方文大

「生涯若々しくありたい!」と願う人は多いでしょう。しかし、男性は50代を過ぎた頃から、徐々に性的機能の衰えを感じるようになります。この時期には、性的機能に関連した症状だけではなく、積極性や意欲が低下したり、疲れやすくなったり、気分が落ち込むようになったりすることがあります。これには男性ホルモン(テストステロン)の減少が関与していると言われ、男性にも更年期があることが最近になってわかってきました。

休み明けなのに疲れが取れない、やる気が出ない。中高年男性の皆さん、それ、更年期障害のサインかも知れません。

そこで今回、男性更年期障害とテストステロンの知られざる働きについて医学的・科学的知見をもとに解説したいと思います。

テストステロンとは?

テストステロンとは主として睾丸から生成・分泌される男性ホルモンです。一般にテストステロンは、性欲・勃起能を含む性機能への作用、筋肉・骨への作用、造血作用、認知機能への作用、幸福感などへの心理的作用、脂質をコントロールする作用、睡眠に関する作用、前立腺調整作用などなど、広範な作用が知られています。

テストステロンは他のホルモンと同様に、加齢とともに徐々に分泌が低下することが知られており、20歳以後、10年ごとに、約10%ずつ低下すると言われています(*1)

また、過度のストレスはテストステロン分泌にとって大敵です。ストレスによって、テストステロン分泌が低下することが報告されています(*2)

男性更年期障害ってどんな症状?

加齢に伴うテストステロンの低下と、それに伴う様々な症状を男性更年期障害と呼びます。また、その病態の本質は精巣の機能低下であると考えられています。

男性更年期障害は、閉経をきっかけに起こりやすい女性の更年期障害と違って、症状が現れる節目の時期がなく、医学的にも社会的にも認知されにくいです。受診の遅れにより、症状が悪化するケースも多く見受けられます。男性更年期障害は大きく以下の3つに分類することが出来ます。

(1)落胆、抑うつ、苛立ち、不安、認知機能低下、疲労感などの精神・心理症状。
(2)関節・筋肉関連症状、骨粗鬆症、脂質異常症、発汗、ほてり、睡眠障害などの身体症状。
(3)性欲低下、勃起障害、射精感の減退などの性機能関連症状。

テストステロン値の低下に伴い、まず性欲が減退します。そして次に意欲の低下、肥満、気分障害、睡眠障害などが生じ、最終的に勃起障害を呈することが報告されています(*3)。

男性更年期障害の診断には、Aging Males Symptoms(AMS)スコアが国際的に頻用されています。治療にはテストステロン補充療法が用いられますが、スコアの点数・テストステロン値・臨床症状を総合的に医師が判断した上で、治療適応か決定されます。

また、テストステロンの低下はメタボリックシンドロームの危険因子となり(*4)、心血管系疾患、糖尿病のリスクを高め、死亡率とも関連することがわかってきました(*5)。早期発見、早期治療が非常に重要です。

次の項からはテストステロン補充用法の効果について解説していきます。

テストステロン補充療法のメリット

(1)精神・心理症状改善(不眠・全身疲労感・うつ症状の改善)
男性更年期障害の症状の一つに不眠があります。筑波大学の研究によると、男性更年期障害の患者の73.8%の方が中等度不眠に悩んでいましたが、テストテロン補充開始後3か月後には38%に半減していました(*6)

また、テストステロン補充により、全身疲労感が21.5%改善され、うつ症状が52.9%も改善されたとの報告があります(*7)(*8)

(2)身体症状の改善(筋肉量・骨量・メタボ改善)
加齢に伴い、筋肉量や骨量は減少し、老化していきます。この一因としてテストステロンの分泌低下が挙げられています。テストステロン補充により、内臓脂肪が減り、筋肉量が27%増加し、腰椎骨密度が4.5%増加したとの報告があります(*9)(*10)。また、テストステロン補充により、ウエスト径を-3.3cm、BMIを-0.8kg/m2減少させたとの報告があり、メタボリックシンドローム対策としても期待されています(*7)。更にテストステロンには、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状況)を改善させることで、血糖を下げる嬉しい効果もあります(*11)

(3)性機能改善(性欲・勃起不全改善)
性機能障害には、性欲障害、勃起障害、射精障害などがあります。前述のように、テストステロン値低下に伴い、一番初めに出る症状が性欲の低下であり、悩まれている方が多いのが実状です。権威ある医学誌で、1年間のテストステロン補充により、大幅な(42%)性機能改善効果が認められたとの報告がなされ、注目を集めました(*12)

テストステロン補充療法のデメリット

テストステロン補充療法により、肝機能障害が生じることがあります。また、正確な関連性や根拠は不明ですが、前立腺がんのリスクを高めるとの報告もあり、投与中は専門医療機関でのリスク評価を行うことが推奨されています。

いつまでも若々しくいるために

超高齢化社会を迎えつつある日本において、単なる生物学的寿命の延長だけではなく、生活の質も視野に入れた健康寿命の延長が重視されています。その中で「アンチエイジング」としてのテストステロンのメリットに注目が集まっています。

今後更なる研究成果が発表されるともに、早期発見・早期治療が行われ、より多くの男性が生き生きとした日々を過ごせるようになることでしょう。

【参考文献】
(*1)Int J Urol 2009;16(2):168-174
(*2)Am J Psychiatry 2002;159:456-459
(*3)Aging Male 2015;18(1):5-15
(*4)Diabetes Care 2011;34(4):828-837
(*5)J Clin Endocrinol Metab 2014;99(1):9-18
(*6)日本性機能学会雑誌 2015;30(3):217-223
(*7)Aging Male 2014;17(1):1-11
(*8)J Clin Psychiatry 2009;70:1009-1016
(*9)J Appl Physiol 1999;66(1):498-503
(*10)Andrology 2013;1:570-575
(*11)Eur J Endocrinol 2006;154(6):899-906
(*12)N Engl J Med 2016;374:611-624

文/緒方文大(おがたふみひろ)
虎の門中村康宏クリニック副院長
京都府立医科大学卒業後、虎の門病院にてがんや慢性炎症性疾患を多く取り扱う消化器内科医に。同時に、がん予防や遺伝子、酸化ストレスなどの研究にも従事。その過程で病院に来る前の根本的な「健康防衛・健康増進」の重要性を痛感し、アメリカの「ライフスタイル医学」を修学。これまでの経験と研究実績を生かし、「細胞レベルからの病気予防」という観点から予防医療の実践・普及に取り組む。

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