文/鈴木拓也
健康を気づかう人たちに大人気のサプリメント(サプリ)。内閣府消費者委員会が平成24年に実施した調査によれば、日本に居住する 20 歳~79 歳までの「健康食品」の利用者男女 10,000 人のなかで、サプリを毎日もしくは時々摂っている人の割合は6割にも及んだという。
「サプリをたくさん摂れば、それだけ健康になれる」と考えている人も多いが、むしろ逆効果になることもあると警告するのが、蒲田リハビリテーション病院の作田英成医師。著書の『「老い」を遅らせる食べ方』(幻冬舎)では1章を割いて、サプリの問題にメスを入れているが、これが非常に興味深い内容となっている。
サプリメント(supplement)という単語は、もともと「何かを加えて完全にする」という意味がある。ビタミンCが不足すれば壊血病などの疾患リスクがあるが、食事だけでビタミンCを十分摂れない場合、ビタミンCのサプリで補うのは理にかなっている。
作田医師がとくに問題と指摘するのは「不足していないものを多量に内服して健康を増進」できるという考えだ。
例えば、体内の活性酸素は老化を早めることはよく知られている。そこで活性酸素を取り除く作用を持つビタミンC、ビタミンE、ベータカロチンのサプリをたくさん摂れば、さぞかしアンチエイジング効果が高いだろおう……と思いきや、そうではないという。
「その考えはまちがっていました。臨床試験の結果によれば、抗酸化ビタミンのサプリは老化関連疾患を予防せず、むしろ死亡率を高めたのです。サプリ界の『スーパースター』とされていたビタミンEのサプリは、偽薬より死亡率を4%高めました。ベータカロチンのサプリは死亡率を7%高め、肺がんのリスクも高めました」(同書より)
抗酸化作用のあるサプリの摂り過ぎが問題なのは、体が必要とする活性酸素まで取り除いてしまうことにあるという(低濃度の活性酸素なら善玉として働く)。ほかの様々なサプリについても、たくさん摂ればいいという医学的研究結果は得られていないとか。
その一方で、抗酸化ビタミンを豊富に含む食事を摂ると、ほどよい効き目を発揮するように思われるのは、食事のほかの成分と相乗効果を発揮したり、過剰に活性酸素を除去しないからだと作田医師は考えている。
そこで作田医師が本書で推奨しているのが、「アンチサプリメント」。これは作田医師の造語で、サプリの有効成分が含まれている野菜、穀類、豆類を多めに食べるというもの。
特に食物繊維の多い食材や地中海食といった食様式がおすすめと言い、これならサプリにあまり頼らずとも有用な植物性化学物質を摂れるという。
特に注目すべき食材は、ブロッコリーや芽キャベツ、それに大豆だそうで、有効成分のスルフォラファンは、過剰な活性酸素を取り除くのに役立ち、スペルミジンは、老化を抑える働きがあるという。そして、これらの物質は、アルツハイマー病の予防にも有望だとしている。
「アンチサプリメント」の食材は、どれもスーパーで買えるものばかり。もし、健康不安からサプリを余計に摂り過ぎていると感じたら、サプリは減らしてこうした食材を意識して食べるよう切り替えてみてはいかがだろうか。
【今日の健康に良い1冊】
『「老い」を遅らせる食べ方』
(作田英成著、本体800円+税、幻冬舎)
https://www.gentosha-book.com/products/9784344914315/
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。