今や「人生100年時代」と言われ、「健康寿命」を伸ばすことが注目されています。脳トレなどに励む人も増えており、記憶力をいかに高めるかも重視されています。さて、頭の中に記憶はどのように残り、その記憶をこれからの人生、どのように使えばいいのでしょうか?その方法を、アサヒグループ食品「シュワーベギンコ イチョウ葉エキス」(機能性表示食品)のイメージキャラクターである小宮悦子さんと、脳科学者・中野信子さんが、語り合いました。報道の第一線で活躍された小宮さんと、科学的知見から脳を分析する中野さんが、「いい記憶をつくる考え方」と「いい記憶とともに生きるコツ」について、ご自身の体験を交えながら、お話してくださいました。
■学生時代の記憶といえば、勉強。
「教科書は、映像で覚えていて、試験勉強はしませんでした」(小宮悦子さん)
――記憶というと、試験勉強を連想するのですが、どのようにされていましたか?
小宮悦子さん(以下・小宮):私は、学生時代の記憶力はよく、教科書はビジュアルで覚えていました。脳が教科書の写真を撮るように記憶していたので、テスト勉強しなくてもよかったのです。
中野信子さん(以下・中野):私も全く同じです。教科書が頭の中に入っており、頭の中の教科書をめくれば答えが書いてありました。このカメラ型の記憶は「映像記憶」というもので、7歳くらいまでは4人に1人が持っているのですが、成長とともに消え、20代近くになってもある人は非常に少ないのです。
小宮:そうなんですか。努力ではなく、親から授けていただいた才能なのですね。今はもうできなくなりましたが、人の顔を判別するのは得意です。大群衆の中にお会いしたことがある人がいると、パッとわかるのです。この能力を生かした仕事があったはずなんですけどね。探偵とか?(笑)。
中野:認知力のテストに、1回見た風景写真を再び見て、無くなっているものを当てるというものがありますが、小宮さんすぐに当てられるかもしれません。
小宮:私は、そういう違いに気が付く傾向は強いです。
中野:不安傾向が強いという結果になりますが、この力は、仕事をする上で、非常に役に立つのです。不安が強いことは、ネガティブに捉えられがちなのですが、慎重だともいえます。仕事で「この人はデキる」と評価される人は、不安傾向が強い。間違いに気づいて指摘できるから、現場では頼りにされるのです。
小宮:放送中に文字スーパーの間違いによく気づいていました。間違いは、気づけばその場で訂正できるので、わかったほうがいいのです。生放送を何十年も続けているうちに、文字スーパーの間違いに気づく力が突出していきました。それには不便もあって、プライベートで映画を観に行くと、間違いをいつも見つけてしまうんです。
中野:私もです。ある映画で、数学界のノーベル賞である「フィールズ賞」が「フィールド賞」になっていたことなど、いろんな間違いを発見しています。
小宮:ところで、社会人になると、記憶はインプットだけでなく、アウトプットしていく作業が、格段に多くなります。
中野:どの場面でどのように記憶を「使う」かを、社会人は問われています。使うことを考えると「いい記憶」ではなく、ネガティブな記憶のほうが役に立ちます。行ってはいけない場所、対人関係のトラブルなど、生き延びるためには、悪い記憶のほうが必要なのです。
小宮:確かにそうです。ネガティブな記憶を使って、学習をしていっています。
中野:はい。学習には、「嫌だ」という感情と結び付いた記憶も必要なのです。
――お二人は、報道と研究のキャリアをずっと重ねておられます。どのように記憶し、アウトプットしているのでしょうか。
小宮:仕事での記憶は出てこないと意味がありません。例えば、選挙特番は、選挙区や政治家の名前が出てきて、それを瞬時にお伝えします。私は苦手だったのですが、対策のために関連記事を読んで、読んで、読みまくったんです。情報を体にしみこませると、不思議と口からも出てくるようになるのです。
中野:それは、「手続き記憶」といいます。記憶には多くの種類があり、「手続き記憶」は「長期記憶」という大きなカテゴリーに属します。長期記憶は、ざっくりと2種類に分けられ「非言語記憶(非陳述記憶)」で、もうひとつは「言語記憶(陳述記憶)」です。後者の言語記憶のほうが、脱落しやすいのです。小宮さんの「手続き記憶」は、非言語記憶に属し、お経、円周率など、「口が覚えている」という記憶の方法です。
小宮:選挙報道はアスリートの感覚に近いです。パッと画面を見て、それを口にして伝えるのです。お経の話が出ましたが、反射神経のようなもので、まさに、修行の日々でした。
■楽しい・嬉しいだけが“いい記憶”とは限らない?
「“記憶”と“思い出”を分けて考えてみてください」(中野さん)
小宮:いい記憶の話題になり、「最近いいことはありましたか?」と聞かれても、私はなかなか思いつかなくて……。
中野:それはむしろ、いいかもしれません。喜びそのものを大きくするには、記憶を振り返らないことです。記憶は生存のために覚えておかねばならないものですから、本質はネガティブなのです。記憶と思い出を分けて考えた方がいいかもしれません。
喜びは常に未来にあります。例えば、うなぎを食べると想定しましょう。脳の中で最も喜びが生まれているのは、「うなぎをもうすぐ食べられる」というとき。食べた瞬間ではないのです。
小宮:喜びは未来にしかないと。
中野:はい。記憶は過去であり、参考にする要素に過ぎないのです。「これを食べたらおいしいかもしれない」など、行動とのマッチングで、未来のいい記憶を作るのです。
―――いい記憶を呼び起こすことは、できるのでしょうか。
小宮:生放送を毎日やっていると、失敗することの方が多くあります。しかし、引きずると、いきいきとニュースをお伝え出来ない。切り替えのためには、毎日「生まれなおす」という感覚を持つようにしました。どんなことがあっても、翌日はニュートラルな状態に戻して、「今」と向かい合う。そういう訓練を無意識にしていました。
中野:上手に忘れる、生まれなおすという感覚はとても大切です。脳は初めての体験の刺激に対して、ドーパミンが出ます。しかし、2回目以降は半減し、3回目以降はさらに反応しなくなるのです。喜びを得るためには、常に少しずつ新しいことをしなくてはいけない。毎日生まれ変わったような気持で過ごすことは、大切なことなのです。
小宮:忘れるのはいいことですが、物忘れが激しいと支障が出てしまいますね(笑)。
中野:そうなんです! バランスが大切なのです。学習を例にとって考えますと、学習は、記憶をたくさんしなくてはならないというイメージがありますが、新しい学習のためには、忘れることが大事なのです。成功体験に引きずられず、ゼロから始めることで、新しい学びがあります。
小宮:人は成功体験に縛られがちですが、乗り越えるにはどうすれば?
中野:成功体験に縛られると、いい結果にならないことが多いです。縛られないためには、若い人と会話をしたり、未来にはさらにいいことがあると、前向きな気持ちで好奇心を維持しながら生きることです。
小宮:私たちはバブル世代で、あのキラキラな時代の成功体験が忘れられない人も多いです。
中野:時代的に恵まれているのと、個人的な成功体験は異なりますので、単にラッキーだったというのは、「認知のゆがみ」ともいえましょう。何歳になっても、毎日生まれ変わるという気持ちでいると、いい毎日が送れると思いますよ。
――――長く生きていると、悲しい経験も多々あります。悲しみとの向き合い方について、お聞かせください。
小宮:悲しい経験もありましたが、それほどひきずらないですね。なるべく忘れるようにしています。時間が味方になり、どんな悲しみも癒えていくものではないでしょうか。
中野:記憶は神経細胞・シナプス同士のつながりです。このつながりが強固になり、記憶が形成されるのです。この結びつきが弱くなると、忘れるという現象がおこります。悲しみの衝撃が強いと、忘れるまで時間がかかります。余談ですが、実験室レベルでは、悲しい記憶を書き換える薬ができているのです。
小宮:記憶を書き換える!? そんなことができるのですか?
中野:はい。明確な目的があり、戦地に行った人々の、社会適応を促すためのもので、アメリカや中国で実験が進められています。ただ、日常レベルの悲しみですと、時間をかけることですね。記憶は、時間とともに書き換わります。事実は変わらなくとも、解釈が変わっていくのです。そのときは強烈な悲しみでも、数年が経過すると、「あの悲しみがあったから今がある」と思うようになるのです。つまり、ネガティブな記憶がモチベーションになるのです。
小宮:悲しみは、ある種、執着の裏返しと言うこともありますよね。
中野:はい、その通りです。人間は、愛着をはがされるときに、つらい思いをします。例えば、慣れ親しんだ土地を理不尽な理由で離れなくてはならないとか、愛する人と理不尽に別れなくてはいけないときなどですね。人は自分とは違うモノや個体に対して愛着を形成します。愛着の絆は、別の個体を自分の一部のように感じ、切り離されると痛みを感じます。この時の痛みは、時間が経っても、処理しきれないことがあります。
小宮:絆が強いほど痛みを感じるのですね。
中野:はい。この愛着には、オキシトシンと言う物質が媒介しています。最も強いのは、出産された方の子供との別れで、日本が属する東アジア文化圏に強いのです。欧米の文化圏は、比較的あっさりしています。
愛着のスタイルは生まれつきではなく、生まれた後の半年から1歳半までの時期の、特定の養育者との関係が深く関わっています。欧米の育児スタイルは、自立を促していますので、情が薄くなる傾向が強いのです。
小宮:それ以降の経験で変化する可能性は低いのでしょうか。
中野:1割程度の人は、無意識のうちに変化しますから、意識すれば変わることが予想されます。ただ、大人になった場合、情が深い人に引きずられる傾向は強いです。
小宮:情が薄い相手に恋をし、振り向いてほしいばかりに、情が濃くなってしまうこともありますよね。
■「長生きする基本的性格」が実験でも証明されました。
「堅実、真面目、悲観的……典型的な日本人は長生きします」(中野さん)
――長生きする人の「記憶の使い方」について特徴はあるのでしょうか。
中野:あります。それは実験でも証明されているのです。1921年に、スタンフォード大学のルイス・ターマン教授が、当時10歳前後の子供1528人の性格分析をしました。その後、彼らがどのような人生を歩んでいくのかを、5~10年おきに80年にわたって追いかけました。壮大な実験なので、言い出しっぺのターマン教授は、終わる前に亡くなっています。
子供たちの性格には、楽天的、悲観的などがあるのですが、70歳以上生き、健康で人生を謳歌したのは、悲観的で真面目な人だったのです。これって、私たち日本人の大部分の人の基本性格のような気がするのですが……。
小宮:楽天的な人が長生きをしそうに思いましたが、そうではないと。
中野:はい。だから私たちは、長い人生を生きなければならないんだな……と。はじけるような喜びは少なくとも、しみじみとした情緒を味わいながら、時を重ねていくのです。
小宮:なるほど……しみじみもいいですが、ただ長いだけの人生と考えると……。
中野:先ほど、悲しい記憶や思い出についてお話ししましたが、長生きしている方と接していると、悲しい思い出を逆説的に捉えて、悲しみ=意義深いものだと捉えている人が多いようにも感じます。
小宮:広く解釈すると、悲しみを楽しめる能力というような力が身についていくのですね。
中野:まさにそうです。あと、はじけるような喜びは、不安とセットでもあります。私もいいことがあると不安になります。例えば、おみくじで大吉が出ると、用心してしまうんです。
小宮:わかります。
中野:それもまた、学習なのでしょう。悲しい記憶は解説しましたので、これから楽しい記憶についてお話したいと思います。楽しい記憶のためには、たくさんの出会いを増やすことが大切です。楽しい人=運がいい人と捉えられる傾向が強いと思いますが、運がいい人はどんな人だと思われますか?
小宮:新しいことに挑戦する人?
中野:その通りです。くじ運の実験をすると、当たる確率は、皆同じです。しかし、運がいいと自覚している人は、コミュニケーションの機会が多く、人生を楽しもうという意識が強い。そういう人が実際にチャンスをつかんでいるのです。これは年齢を問わず、だれもがそうです。
小宮:年齢に関係なく、新しいことを始めると、何かが自分の中に生まれます。私も数年前からゴスペルを始めたのですが、最初はダンスしながら歌うというのが難しくて。しかし、やっているうちに大きな声で「ゴッド!」「ジーザス!」と体を動かしながら歌い、解放感につながっていくのです。この感覚に驚きました。まだ、人生にはこんな喜びが待っているんだと。
中野:とても素敵ですね! 想像以上に楽しい経験をするとドーパミンが出ます。
小宮:何かに夢中になることで、眠っているDNAが覚醒する「DNAスイッチ」が注目されています。能力は行動で花開くのだと感じました。
中野:はい。いつまでも、好奇心を忘れず、挑戦し続けること。これがいい記憶の源泉になるはずですよ。
――対談を終えたご感想をお願いします。
小宮:悲観的で慎重で真面目……私の性格はコンプレックスだったのですが、今回、お話を伺って安心しました。これからもちょっとした勇気をもって、挑戦を続けていこうと思います。
中野:今日、とても緊張していたのですが、とてもいい雰囲気を作ってくださって、リラックスしてお話ができました。小宮さんは自然なふるまいに、落ち着きがあり、今、とても感動しています。今日は本当にありがとうございました。
アサヒグループ食品
「シュワーベギンコ イチョウ葉エキス」(機能性表示食品)
アサヒグループ食品
「シュワーベギンコ イチョウ葉エキス」(機能性表示食品)
【機能性関与成分】
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトン
【届出表示】
本品にはイチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトンが含まれます。イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトンには、健常な高齢者の加齢によって低下する脳の血流を改善し、認知機能の一部である記憶力(言葉・物のイメージ・位置情報を思い出す力)を維持する機能があることが報告されています。
◆本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
◆本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
◆食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
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取材・文/前川亜紀 撮影/荻原大志