■毛細血管の役割とは?
血管の役割として、“動脈は栄養や酸素を運ぶ。静脈は老廃物や二酸化炭素を運ぶ”というのは聞いたことがある人が多いことでしょう。
では、毛細血管はというと……? 全身の細胞に必要なものを送ったり、不要なものを整理したり、直接やりとりできるのは毛細血管だけなのです。
人体にある約37兆個の細胞の大きさは0.0005mm~0.1mmほど。太くて立派な動脈や静脈では、ごく小さな細胞たちと物質交換ができません。そこで、動脈・静脈の末端に網目状に張り巡らされた毛細血管が、細胞との媒介役を担ってくれるのです。
動脈を流れる栄養や酸素は、毛細血管からしみ出して細胞に送られます。また、細胞で発生した老廃物や二酸化炭素などは、毛細血管にしみ込んで静脈へと運び出されていきます。
毛細血管がなければ、全身の細胞は栄養などを取り入れることも不要物を排出することもできないのです。毛細血管は細胞が生きるか死ぬかの決定権を握っているといっても過言ではないでしょう。
■毛細血管とからだの器官との深い関係
毛細血管は全身の細胞と直接やりとりする……といっても、それがどれくらい重要なのかイメージがつかみにくいかもしれません。そこで、毛細血管が全身で果たす役割のほんの一部をご紹介しましょう。
(1)肺の働きに不可欠
肺は、呼吸による酸素と二酸化炭素の交換を行う器官ですが、そのはたらきには毛細血管が大きく関わっています。
酸素は、鼻、気管、気管支、そして肺の奥深くにある“肺胞”に届いたのち、毛細血管から赤血球に取り込まれ、全身の細胞へと届けられます。
一方、細胞で発生した二酸化炭素は、“細胞→毛細血管→静脈→肺胞のまわりを覆う毛細血管→肺胞”という経路で肺胞まで到達したのち、吐く息とともに体の外に排出されます。
つまり、毛細血管がなければ、肺でのガス交換も不可能になってしまうということです。
(2)肝臓の働きを支える
肝臓といえば、栄養素を代謝したり、有害物質を解毒したり、消化液である胆汁を作ったり、実に500以上の役割を担っているといわれていますが、その働きを支えるのも毛細血管。
「肝臓の細胞に栄養を送っているのが毛細血管で、肝臓の中を満たしている肝細胞に寄り添うように毛細血管が流れ、そこから栄養や酸素を送り出し、老廃物を受け取って運び出しているのです。肝臓の細胞がうまく働かなければ、胆汁が作れなくなって、食べ物を消化したり、不要なものを排出できなくなり、タンパク質、脂質、炭水化物からなる三大栄養素の代謝もできなくなり、解毒もできなくなる…まさに命とりの状態になってしまいます。そうならないためにも、毛細血管がせっせと働いて細胞に栄養を送り、不要物を取り除くことで、肝臓の健康を守っているのです。」(本書より引用)
よく“働き者の臓器”などと称される肝臓ですが、その活躍も毛細血管の支えがあってこそなのです。
(3)毛髪の発育にも影響
加齢とともに気になる毛髪の悩みですが、実は、髪の毛に栄養を届けるのも毛細血管の役割です。
「髪の毛の根本部分の「毛根」には、「毛母細胞」という髪を作る細胞があり、毛母細胞のまわりの毛細血管が、髪の成長に必要な栄養や酸素を、送り届けています。
(中略)
もし、毛細血管の流れが悪く、栄養や酸素を毛母細胞に届けることができなければ、髪は栄養不足になって成長できず、細く未熟なまま、寿命より早く抜け落ちてしまいます。」(本書より引用)
毛髪の悩みについて「年だから仕方ない」と諦めている人もいるでしょうが、毛細血管のはたらきしだいでは、薄毛の進行を遅らせることも可能かもしれないのです。