文/中田綾美
健脚のためには、“階段”か“エスカレーター、エレベーター”か、どちらを使うべきでしょうか?
「そんなの階段に決まっているじゃないか」と考えるかたが多いかもしれませんね。目的地まで自動的に運んでくれるエスカレーター、エレベーターよりも、しっかり自分でからだを動かす階段のほうが老化予防によさそうな気がする……。
しかし、「さかいクリニックグループ」代表で柔道整復師の酒井慎太郎氏は、“階段を使って脚の筋力をつけるのがいい”という説に異議を唱えています。
脚の健康を保ち、寝たきりを予防するには、無理に階段を昇り降りするよりも、可能な限りエスカレーターやエレベーターを使用するほうが望ましいというのです。一体どういうことなのでしょうか?
酒井氏の著書『変形性膝関節症は自分で治せる!』(学研プラス)から、階段昇降が健康に及ぼす意外な悪影響をご紹介します。
■階段昇降でひざに150キロ以上の負荷が?
酒井氏が、健脚のためには階段はできる限り避けるほうがいいと主張する理由は、階段昇降時にひざに過剰な負担がかかってしまうことにあるようです。
「平地を普通に歩いているときでも、ひざには体重の3~8倍もの重みがかかっています。体重50キロの人であれば、少なくとも150キロの負荷がかかっていることになります。さらに階段の昇り降りをするとなれば、これ以上の大きな負荷がひざの関節を襲うことになるのです。
ひざのクッション機能を担う半月板や軟骨は、“消耗品”です。大きなプレッシャーを受けながら使われるほど、すり減っていくスピードがどんどん早まります。
150キロ以上の負荷がかかる階段昇降は、これらの消耗品をムダに使いすぎることになります。」(本書より引用)
階段を使って脚力を鍛えるつもりが、実はひざ関節を消耗させているとは恐ろしいことですよね。
■ひざへの負荷を最小限におさえる階段での歩き方
階段昇降がひざに悪影響を及ぼすおそれがあるとはいえ、全く階段を使わずに日常生活を送るわけにもいきません。
同書で酒井氏は、ひざに負担をかけないために、階段を使う際に心がけるべき歩き方のポイントを紹介しています。
(1)かかとからゆっくり着地する
(2)足の裏全体をペターッと床につけていく
(3)足の裏をできるだけ長く床につけるようにしながら、徐々にかかとを上げていく
(4)足の親指で床を蹴るようにしながら前進する
とくに、急いでいるときなどは、足を乱暴に床についてしまいがちですが、その歩き方ではひざに大きな負担をかけるおそれがあります。かかとや足の裏に柔らかくゆっくりと体重をのせることを意識しましょう。
ちなみに、上記(1)~(4)は、階段だけではなく、平らな場所を歩くときにも、ひざへの負担を緩和してくれるとのことです。
ひざ痛が悪化すると、歩くこと自体が億劫になり、からだを動かさないことで筋力が衰えの一途をたどりやがて寝たきりへ……ということにもなりかねません。
こうした事態を予防し、長く健脚を保つためには、上記(1)~(4)に加えて、“よい姿勢”と“ひざを伸ばすこと”を意識しつつ、毎日10分程度のウォーキングを習慣化するとよいとのことです。ぜひ参考にして、健脚の維持にお役立てください。
【参考図書】
『変形性膝関節症は自分で治せる!』
(酒井慎太郎著、学研プラス)
http://hon.gakken.jp/book/2380075400
文/中田綾美