文/中田綾美
年齢を重ねても若く溌溂と暮らしたい。自分の足で自由に歩き回りたい。寝たきりになって、家族を介護で煩わせるのは避けたい。これらは人間のごく普遍的な願いといえるでしょう。
加齢で足腰がある程度弱るのは致し方ないとしても、完全に動けなくなる“寝たきり”を予防するには何かよい方法はあるのでしょうか?
白澤抗加齢医学研究所所長で医学博士の白澤卓二氏によれば、実は日本の伝統的な遊び“けん玉”が寝たきり予防に効果的とのことなのです。
なぜ、けん玉が予防効果を発揮してくれるのか? 白澤氏の著書『50代から始める ドクター白澤流「寝たきり」にならない5つの習慣』を参考にご紹介します。
■なぜけん玉遊びが寝たきり予防に有効なのか?
寝たきり予防には何か運動を……とはいえ、体を動かす習慣のない人がいきなり激しい運動に取り掛かるのは怪我のもと。
この点、けん玉は子どもからシニアまで誰でも気軽に始めるのに適した運動なのです。
「けん玉は実は全身運動なのです。腕を振って玉を振り動かし、うまく皿で受け止めるには、リズミカルに膝を屈伸させる必要があります。けん玉を続けることはゆっくり歩く程度の有酸素運動に相当するという研究結果もあります。」(本書より引用)
ウォーキングと同じような効果が得られて、しかも季節や気候の変化にも影響されないという点で、けん玉遊びは始めやすく、かつ“続けやすい”というメリットもあるといえます。
■覚えておきたいけん玉の基本動作
“けん玉”で動画検索すると、基本動作の解説から高度な技を披露するものまでさまざまな動画があります。もちろん、いずれ華麗な技に挑戦するのも結構なのですが、寝たきり予防にはまず次の基本動作を覚えましょう。
(1)軽く膝を曲げた状態で立ち、玉を引き上げる準備をする
(2)膝を伸ばしながら玉を引き上げる
(3)膝を曲げて玉を皿で受け止める
基本は、膝を上下に屈伸させて玉を持ち上げ、皿に受け止めるという動作の繰り返しです。この過程で自然に腰も上げ下げし、ふくらはぎにも多少の負荷がかかるので足腰の鍛錬につながります。
■バランス感覚を養う“手のせろうそく”
上記の基本動作ですが、実際にやってみると玉をうまく受け止めることが難しいかもしれません。そこで、初心者におすすめなのは、“手のせろうそく”という動作です。
(1)“けん”の玉のささる突起部分(けん先)を持って、逆さ状態に持つ
(2)先端の皿に玉を乗せて10秒間落とさないように持ち続ける
玉を乗せて落とさないようにするだけなら、簡単だと思いますよね。しかし、バランス感覚が低下した人だとこれがなかなか難しいのです。
「バランス感覚が低下すると、どうしてもころびやすくなったり、いざころんだときに受け身がとりづらくなったりします。
片足立ちで20秒以上バランスをとれない人は、認知症を含む脳疾患の発症リスクが高いという研究結果もあるほどで、バランス感覚の低下は避けられない加齢現象でありながら、低下にまかせてはおけないという厄介な問題です。
そのバランス感覚を鍛えるために最適なのが、けん玉の皿に玉をのせて静止する「手のせろうそく」なのです。」(本書より引用)
まずは、きちんと“手のせろうそく”ができるかどうか自分のバランス感覚をチェック。静止する動作に慣れてきたら、次は玉をのせたまま歩いてみるなどして、バランス感覚を鍛えましょう。
以上、『50代から始める ドクター白澤流「寝たきり」にならない5つの習慣』から、けん玉の意外な効果をお届けしました。
けん玉は競技用の本格的なものでも2,000円程度。100円ショップでも店舗によっては取り扱いがあります。けん玉遊びで楽しみながら、健康長寿を目指しましょう。
【参考図書】
『50代から始める ドクター白澤流「寝たきり」にならない5つの習慣』
(白澤卓二著、日本実業出版社)
http://www.shirasawa-acl.net/book/160310_netakiri.html
文/中田綾美