午後から痛みだす腰痛は、デスクワークの方に多い傾向があります。
この痛みの原因は、おもに筋疲労なのですが、比較的治りやすい痛みです。
今回は、その痛みの治し方を解説したいと思います。
午後から痛みだす腰痛の原因は筋疲労
朝はなんでもないけれど、座って仕事をしているとお昼すぎや午後になって段々腰が痛くなってくる。または、夕方や夜から腰が痛みだすけれど、一晩寝ると朝には良くなる。しかし、また午後や夕方に痛くなってくる。
そんなパターンを繰り返してしまう腰痛の症状があります。
病院にいって検査をすると、腰椎にヘルニアがみつかったり、脊柱管に狭窄がみつかったりして、それが原因と言われるかもしれません。
しかし、このような午後から痛みだす腰痛の原因は、筋疲労の場合がほとんどです。
ごく簡単に説明すると、ずっと座っている姿勢を維持する腰の筋肉が、午後になると疲れて痛みだすのです。
筋肉の疲労ですから、一晩寝るとある程度回復して朝は痛まないのですが、また午後になって疲れてくると痛くなる……。これが繰り返されている症状なのです。デスクワークや座っておこなう軽作業の方などによくみられるのですが、もちろん立ち仕事や他の作業やお仕事の方にもみられます。
午後から痛みだす腰痛は治りやすい?
このような症状が長年なかなか治らないで苦しんでいる方も多いと思いますが、じつは治りやすい症状です。
治りやすいポイントとして、ひとつ目は寝ると朝にはある程度痛みが治まっているということが言えます。これはまだ体に回復力が残っている証拠。回復力が残っているうちなら適切な対処をすれば良くなっていきます。
ふたつ目は、筋疲労を起こしやすいということは筋力体力が低下している、または原因となる仕事や作業に対して体力が不足しているということ。これを逆に言えばその筋力体力をつければ良くなる余地があるということです。
つまり、身体の回復力を助け、筋力体力を向上させることができれば、充分に良くなるということです。
そんなことができるの? と、思うかもしれませんが、一人で自宅でできるセルフケアやストレッチ、トレーニングなどで改善することができます。
疲労の回復を助けるには筋肉をほぐして血行をよくする
疲労の回復を助けるには、筋肉をほぐして血行を良くすればいいのです。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、テニスボールでほぐす方法やストレッチをおすすめしています。
とくにデスクワークで腰が痛む場合は、次のような筋肉を目標にほぐしやストレッチをおこなうといいでしょう。
【腰方形筋】
腰方形筋は、腰に手を当てた時に親指が当たるあたりにあり、肋骨と背骨(腰椎)と骨盤をつなぐ筋肉です。
腰が疲れた時や痛む時などに、自然と指で押したり揉んだりする部分の筋肉なのですが、この筋肉は骨盤や腰、背骨を支えたり、身体を左右に曲げる時などに働きます。
そのため、長時間座ったままの姿勢をしていると、この筋肉が疲労してこり固まってしまいます。
腰方形筋がこりかたまってしまうと、上の図の赤い範囲のように、腰からお尻にかけての痛みを起こします。
【中殿筋】
中殿筋は、骨盤と大腿骨をつなぐ筋肉です。骨盤や股関節を支えたり、股関節を動かしたりする役割があります。
とくに長時間座ったままの姿勢では、この筋肉で体重を受け止めるようなかたちになりますので、疲労してこり固まってしまいます。
中殿筋がこり固まってしまうと、上の図の赤い範囲ように腰の真ん中あたりからお尻にかけての痛みを起こします。
また、腰や骨盤のまわりには他にもたくさんの筋肉があり、それぞれ痛みの原因となる場合があります。
テニスボールでほぐす方法
硬球のテニスボールやマッサージ用のボールなどをご用意ください。
テニスボールで狙う場所は、主に次の3か所です。
(1)背骨のすぐ横 【脊柱起立筋】
(2) 肋骨と骨盤の間((1)のやや外側)【腰方形筋】
(3) お尻の上半分(骨盤の骨の下)【中殿筋】
まずはこれらの部位をなんとなくイメージして頭に入れておきましょう。
ボールの当て方には少しコツがいります。
腰のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。
下の図のように身体を傾けるようにして、ゆっくりとボールに体重を乗せるようにしましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みを感じるとつい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
痛みがある時にグリグリと転がすように刺激すると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
狙う場所で説明した(1)(2)(3)の部分の中から、まずは一番痛みが気になるあたりや、自分で押したり揉んだりしたくなるあたり、マッサージして欲しいと思うあたりにボールを当ててみましょう。
うまくポイントに当たると、『痛気持ちいい』『ジーンと効く感じ』『ツボを押されている感覚』などがあります。
このような感覚を感じるところを探しながら、1cmずつくらいボールを動かしていきます。
(1)脊柱起立筋や(2)腰方形筋の場合、筋肉に沿って縦方向に少しずつずらしながらポイントを探しましょう。
(3)中殿筋の場合は、骨盤の骨のきわやその下あたりを少しずつずらしながらポイントを探してみましょう。
ちょっとした位置やボールを当てる角度により、効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを当てながら探してみてください。
テニスボールを当ててほぐす時間としては、
●1か所10~20秒程度
●全体でも5~15分程度
くらいから始めることをおすすめしています。
あまり長い時間おこなうと、その後で、または翌日などにかえって痛みが増したりしますので、はじめは短時間でおこなって様子をみてください。
短時間おこなって大丈夫なようでしたら、少しずつ時間を伸ばしてみましょう。
腰の筋肉をストレッチする
ボールでほぐしたら、その筋肉をストレッチします。以下のようにおこなうと、腰方形筋や中殿筋などをストレッチすることができます。
仰向けに寝て片脚を90度持ち上げます。そこから持ち上げた脚を反対に倒すようにして腰を捻りましょう。
下の図の場合は、左脚を持ち上げてから右に倒すようにしています。
腰からお尻にかけて心地よく伸びたところで止め、30~60秒ほどキープします。呼吸は楽に続けて、息を止めないようにしましょう。
できる方は、顔を倒した脚と反対側に向けるとよりストレッチがかかります。
身体の力をできるだけ抜きます。とくに伸びている腰やお尻の力を抜くようにしましょう。力んでしまうと十分に筋肉が伸びません。
終わったらゆっくりと戻し、反対側も同じようにおこないましょう。それぞれ2~3回ずつおこなってください。
痛みがあってこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
腰の筋力を強化するエクササイズ
最終的には、腰の筋力を強化することができれば、午後から痛みをおこす症状はなくなっていきます。
しかし、いきなり筋力トレーニングをおこなうとかえって痛みがおこったり、症状が悪化したりする可能性もあります。
テニスボールのほぐしやストレッチである程度症状が落ち着いたら、ぜひトレーニングに取り組んでみてください。
腰の筋力を強化するトレーニング法は様々な方法がありますが、比較的安全な方法として、次のトレーニングをおすすめしています。
【プランク】
肘立て伏せの姿勢で身体をまっすぐにキープするトレーニングです。腹筋を中心として体幹前面で支える筋肉をトレーニングすることができます。
【サイドプランク】
上図のように、身体を横にした状態から片腕の肘で支えて身体をまっすぐにキープするトレーニングです。
体幹側面、とくに腰の筋肉に効くトレーニングです。
どちらも最初はかなりキツイと思いますが、筆者は「最初は3~5秒キープするくらいからはじめましょう」と指導しています。
しばらく3~5秒のトレーニングを続けていると、徐々に無理なく出来るようになりますので、そこから10秒、15秒、20秒と5秒刻みくらいで少しずつ時間を伸ばします。
最終的に30~60秒ほどできるようになると、腰痛はかなり良くなってくるでしょう。
痛みがあってこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
この記事があなたの痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
また以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
正しい座り方とストレッチで腰痛予防! イスに座ったままできるストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第90回】(https://serai.jp/health/1075855)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html