文/印南敦史

いまや、「腸活」という単語もすっかりおなじみのものとなった。とはいえそこには、「30〜40代の女性が美容と健康のために行うもの」というようなイメージが絡みついてもいたのではないだろうか?

しかし実際には、単純にそういい切るわけにもいかないようだ。『腸を整えたければバナナを食べたほうがいいこれだけの理由』(小林弘幸 著、アスコム)の著者は、いまや子どもから高齢者まで、便秘に悩む「国民総腸活時代」がやってきていると指摘しているのである。

特定非営利法人日本トイレ研究所が行った「小学生の排便に関する記録調査2021」によると、1週間の中で、毎日排便があった児童は36%しかおらず、「0〜2日」だった児童も8%いたという結果が出ています。(本書49ページより)

高齢者はさらに深刻で、厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上で便秘の症状を自覚している方が、人口1000人に対して68.6%もいるという結果が出ています。(本書50ページより)

いうまでもなく原因として考えられるのは、加齢による腸機能の低下、食事量の減少に伴って便の量が減る、食物繊維摂取量が減るといったことである。また、女性は更年期でホルモンバランスが崩れることでも影響が出るのだという。

そこで著者は、「年齢を重ねてきたら腸活に取り組むべき」だと主張しているのだが、特徴的なのは、そのための手段として「バナナ腸活」をすすめている点だ。

私が、バナナを食べる腸活、名付けて「バナナ腸活」をおすすめする理由が主に2つあります。
1つが、バナナは、不溶性、水溶性(発酵性)の2種類の食物繊維を含むだけでなく、ハイパー食物繊維「レジスタントスターチ」を多く摂れるという点です。(本書36ページより)

「消化されない(レジスタント)」「でんぷん(スターチ)」という意味のレジスタントスターチは、食物繊維と同様、消化されずに大腸まで届いて作用する。その特徴は、不溶性と水溶性(発酵性)、2つの食物繊維の機能を兼ね備えているということ。

つまり、善玉菌がすみやすいように腸をきれいにし、なおかつ善玉菌のエサとなって腸を元気にさせる「腸活の二刀流」といった働きを見せてくれるのだ。

加えて、著者が「バナナ腸活」をすすめるもうひとつの理由が「食べやすさ」だ。どんなに効果がある方法だったとしても、途中でやめてしまえば努力は水の泡になってしまう。だがその点において、バナナには強みが多いのだ。

バナナなら洗わず、包丁もいらず、皮をむけばすぐに食べられます。持ち運びもしやすいので、仕事先や外出先でも食べられるのです。しかも、スーパーやコンビニなどさまざまなところで売っていて、全国どこでも1年中手に入る。(本書38ページより)

使い勝手の面からも、入手のしやすさの面からも、味の面からも、「超活を継続しやすい」というメリットがあるわけである。

ただしそんなバナナには、「甘いし太りそうな気がする」「脂質やカロリーが高そうだ」といったイメージもあるだろう。だが、それは「とんだぬれぎぬ、大きな誤解」だと著者は語る。

バナナのカロリーは、1本(可食部100g)で約93kcalと、ケーキやアイスクリームはもちろんのこと、ごはんやパンなどと比べても低いのです。ごはんだと茶碗約半分(約82g)、食パン(6枚切り)約半分(37.5g)と同じカロリーです。
また、脂質が100g中0.2gと、ほとんど含まれていないのもポイントです。(本書39ページより)

そして、バナナが太りにくいといえるもうひとつの根拠が「GI値」の低さ。GIとは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略。その食品を食べた直後に血糖値がどのくらい上がるかを、ブドウ糖を基準(=100)として相対的な数値で表したものだ。これが、その食材を摂ったときに太りやすいか太りにくいかを見極める判断基準のひとつになる。

GI値が低い食べ物(低GI食)ほど消化吸収がゆるやかになるため、血糖値が上がりにくく、脂肪をため込みにくくなるのである。たとえばお菓子は基本的に高GI値のものが多いので、ダイエット中には注意が必要だ。

同様に精製された砂糖や小麦粉などの粉類も高GI食となるが、とはいえ一概に「甘いもの=高GI値」とはいえない。

たとえば、そんなにあまくないおせんべいは、「91」という高いGI値なので、ダイエット中なら避けるのが無難です。
また、果物ならスイカはヘルシーそうですが、GI値は「80」と高めです。
一方で、バナナは、茎が緑色(グリーンチップ)のバナナは「41」、熟したバナナでさえ「52」と控えめな数値です。(本書42ページより)

バナナが低GI食である理由のひとつとして考えられるのが、前述した食物繊維とレジスタントスターチ。これらには、食後の血糖値の上昇を穏やかにするという役目があるのだそうだ。

だからといって、いくら食べても太らないというわけではないだろう。しかしそれでも、カロリーやGI値を鑑みればバナナのメリットはイメージしやすい。さまざまな「バナナレシピ」も紹介されている本書を参考にしながら、まずは楽な気持ちで「バナナ腸活」を始めてみてはいかがだろうか?

『腸を整えたければバナナを食べたほうがいいこれだけの理由』
小林弘幸 著
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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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