腸に本来の力を発揮してもらうために『医師が教える 1分腸活』

たとえば「やせにくくなってきた」というような体型の変化、あるいは「イライラしてよく眠れない」などの不調など、健康に関連してさまざまな悩みを抱えている方は少なくない。

なかには「年だから仕方がない」とあきらめている人もいるだろうし、そう感じるのは仕方がないことだという気もする。

だが、“腸のスペシャリスト”である『医師が教える 1分腸活』(小林弘幸 著、自由国民社)の著者は、それは実にもったいないことだと主張している。腸の健康を保てば、そういった不調や悩みは解決できる可能性があるというのだ。

腸は食べ物を消化吸収し、便をつくるだけの臓器ではありません。
腸は質のよい血液をつくる工場のような役目も果たしています。食べ物の消化吸収をスムーズに行なうことで、栄養たっぷりの血液を全身に届けているのです。質のよい血液がめぐると、肌がきれいになる、疲れにくくなる、冷えやむくみが改善されるなどの気になる体の不調が解消しますし、代謝が上がるので、太りにくい体質になっていきます。(本書「はじめに」より引用)

そればかりか、腸は体を感染症などの病気から守る免疫機能を兼ね備えていたり、気持ちを安定させるホルモンの生成に関わっていたりと、健康のすべてを支える要だといっても過言ではないそうなのだ。

そこで本書では、腸に本来の力を発揮してもらうためのポイントとメソッドをまとめているのである。STEP3「1分で腸が喜ぶ食習慣」のなかから、「和食」の効能についてのトピックスをご紹介しよう。

腸の働きをよくするためには、まず内側からのケアとして腸内環境を整えることが大切。善玉菌を活性化させることが必要になるわけだが、ポイントは次のふたつだという。

発酵食品を毎日食べる
食物繊維が多い食材を食べる
(本書72ページより引用)

腸に、内側からダイレクトに働きかけることができる手段は食事しかない。日ごろの食生活を通じ、どれだけ善玉菌が喜ぶ食材をとれるかが、腸内環境のよし悪しを決定づけるのである。

そこで重要な意味を持つのが、発酵食品と食物繊維。なぜなら発酵食品は善玉菌を増やし、食物繊維は善玉菌のエサになるだけでなく、腸内の大掃除をしてくれるから。いわば腸にとっては、至れり尽くせりの食べ物なのだ。

そして、このふたつをバランスよくとれるのが、一汁一菜を基本とする「和食」である。

日本では、みそ、しょうゆ、みりん、酒、酢などの調味料をはじめ、ぬか漬けや納豆など、古くからさまざまな発酵食品が食卓に並んできた。しかも、ぬか漬けやみそ汁、酢の物など発酵調味料を使って野菜や海藻類などの副菜を増やせば、食物繊維も豊富にとることができる。

では、発酵食品はなぜ腸に効くのだろうか?

発酵食品とは麹菌、納豆菌、酵母、酢酸菌、乳酸菌など微生物の力を借りて、食材のうま味を引き出したり、栄養価をアップさせたもの。乳酸菌などの善玉菌が豊富に含まれるため、毎日食べることで腸内の善玉菌が活性化し、悪玉菌を減らしたりするのにも役立ちます。しかもすでに発酵によって食材の分解が進んでいるので、ほかの食材よりも栄養の消化吸収が効率よくできます。(本書73ページより引用)

こうして腸内の善玉菌が優勢になっていくと、「日和見菌(腸内の善玉菌と悪玉菌の、優勢なほうに味方する腸内細菌)」が一気に加勢することに。すると腸内環境がよくなって、消化や吸収もスムーズになるというわけだ。

その結果、便秘解消はもちろん、新陳代謝が高まってダイエットや美肌、美髪にも効果が。そればかりか、免疫力もアップするというのだから心強い。

ちなみに和食はつくるのに手間がかかりそうだが、すべてを和食にする必要はない。たとえば、朝のおかずに納豆をプラスするだけでもいいのだ。

外食でメニューに困ったら、とりあえず「和食」を選ぶのもアリ。定食にすれば1回の食事で発酵食品を多めにとれます。また夜、自宅でお酒を飲むときなど、ぬか漬けやチーズ、キムチ、塩辛などをおつまみにするのもよいでしょう。ほかにも、意外と知られていないのですが、サラミ、アンチョビ、かつおぶし、メンマ、ピクルスなども発酵食品です。(本書74ページより引用)

食事からとる善玉菌は生命力が弱いため、便で排出されてしまう。そのため、毎日継続して食べることが大切なのだ。いわば、コツコツと日ごろから積み重ねをしていくことが“腸活”の第一歩だとうことなのだろう。

無理して多めに食べる必要はなし。大切なのは、賢く食材を選び、習慣にしていくことなのだ。

『医師が教える 1分腸活』

小林弘幸 著
自由国民社
定価 1,320 円(本体 1,200 円 + 税)
2019年6月発売

『医師が教える 1分腸活』文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

 

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