文/鈴木拓也

順天堂大学医学部教授で、健康をテーマにしたベストセラー作家でもある小林弘幸教授は、御年61歳。

ふつうなら60を過ぎれば、さすがに寄る年波には逆らえないもの。しかし、小林教授は、初対面の人から「還暦を超えているようには見えない」と言われるほど、若々しい肌つやをしている。

また、16歳からずっと63kgの適正体重をキープ。多少の増減はあるが、中高年太りとは無縁だ。

厳格なダイエットにジム通いといった、ストイックな生活をしているわけでもないそうだ。
小林教授によれば、その若さと体重の秘密は「たんぱく質」にあるという。

「たんぱく質中心の食生活」を送っていることが、健康的なやせ体質を続けられるコツだと著書『お腹いっぱい食べても太らない医師が発案した たんぱく質ダイエット』(ワニブックス)で打ち明けている。

健康寿命を延ばすには不可欠

言うまでもなくたんぱく質は、三大栄養素の1つ。肉、魚、卵、大豆に豊富に含まれているのはご存知だろう。

目新しい栄養素が次々と脚光を浴びる昨今、目立たない存在だが、それゆえ軽視されやすいのかもしれない。

特にシニア世代は、粗食になりがち。小林教授は、「サルコペニアを予防し、健康寿命を延ばすためには、たんぱく質の摂取が欠かせません」と注意を促す。

たんぱく質の1日の摂取量は、男性で60g、女性で50gの摂取が推奨されていますが、厚生労働省の調査では65歳以上の男女でともに摂取量が不足していることがわかっています。毎食およそ20gと考え、「より多めに摂る」という意識を持つことが、健康でいるための秘訣と考えてください。(本書より)

「毎食およそ20g」とあるのは、一度にまとめて摂っても、体内での吸収には限界があるため。
また、好物だからと肉・魚ばかり食べるのは考えもの。脂質オーバーになったり、腸内の悪玉菌が増加するというデメリットがあるからだ。小林教授は、自身の食事では「動物性たんぱく質が7割、植物性たんぱく質が3割」という比率でバランスをとっている。植物性たんぱく質については、大豆がイチオシだが、白米や小麦食品(パン、パスタ等)にも含まれる。ただし、こうした主食だけでは、必須アミノ酸が足りないので、適宜良質なたんぱく質を毎日のメニューに取り入れることが肝心だ。

免疫力アップにもたんぱく質を

たんぱく質の不足で見逃せない問題に「免疫力の低下」がある。

リンパ球のような、病原体を直接攻撃する免疫細胞は、主にたんぱく質からできているからだ。言い換えれば、「免疫力アップにたんぱく質を」となるが、一緒に摂りたい栄養素として、小林教授はビタミンを挙げる。

細菌やウイルスなどの異物から体を守っている白血球は、ビタミンCによって活発になります。さらにビタミンDは免疫機能のバランスを整え、ビタミンAは、外敵が侵入してくる鼻や喉の粘膜を守り、強くする働きがあります。(本書より)

また、免疫細胞の7~8割は腸内に存在しているため、腸内環境の改善=腸活がワンセットとなる。

小林教授は、腸活の基本は「自律神経のバランスを整えること」だと説いているが、それには規則正しい食生活が欠かせない。

具体的には、朝食は起床後1時間半以内に摂り、夕食は就寝の3時間前までに済ませる。特に朝食には自律神経を整える働きがあり、とても重要。

そして、腸活といえば発酵食品やきのこ。最近の研究では、納豆や日本酒に含まれるアミノ酸「5-ALA」には、新型コロナウイルスの増殖を抑制する効果があることが確認されている。この点からも、積極的に摂るようにしたい。

朝食を摂らないと体は目覚めない

小林教授が、1日3食のなかで最も重視するのが朝食だ。

本書では、その理由をいくつか挙げているが、大きいのは「体内時計」をリセットする役割。
「体内時計」は、睡眠・覚醒のサイクルや血圧の変動など、様々な生理機能をコントロールする働きを持つ。これは時計遺伝子によって制御されているが、この遺伝子は1日を24.5時間に設定している。このため、(1日は24時間なので)毎日約30分のズレが生じることになる。しかし、このズレは、朝食を食べることで正されるという。

もし、体内時計がリセットされないままでいると、自律神経がスムーズに切り替わらず、体が目覚めないまま一日中ぼんやりして、仕事にも身が入りません。そのうえ脂質の代謝やホルモン分泌にも異常が起こり、肥満を招きやすくなることがわかっています。(本書より)

また、ある程度の分量を食べないと体内時計はリセットされない。和食だと「目玉焼きに納豆とごはん、みそ汁をつけて、軽い定食」くらいは必要という。

忙しいからと朝食を抜き、昼にそれを取り返すかのように丼ものをかきこむ食生活を送っているのなら要注意。早めに起きるなど、ライフスタイルを見直したい。

また、脳内神経伝達物質として知られるセロトニンの原料となる栄養素も、朝のうちに確保するようアドバイスされている。その栄養素とは、必須アミノ酸のトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の3つ。トリプトファンは乳製品・大豆に豊富に含まれており、たんぱく質ダイエットの路線とかち合わないので、摂りやすいはずだ。

* * *

小林教授の提唱するたんぱく質ダイエットは、余計なお金もかからず、つらい我慢も要らない。続けやすいので、いろいろなダイエットにチャレンジして挫折した人にもすすめやすい。興味のある方は、本書を参考に始めてみてはいかがだろうか。

【今日の健康に良い1冊】
『お腹いっぱい食べても太らない医師が発案した たんぱく質ダイエット』


小林弘幸著
ワニブックス

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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