文/鈴木拓也
TBSラジオの長寿番組「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」のパーソナリティ・生島ヒロシさん。自然療法の名医として数々の著書を世に出してきた石原結實(ゆうみ)院長。
一見、何のつながりもなさそうな2人だが、齢70を過ぎて健康そのものという共通点がある。そして、実はこの2人、ラジオ番組の健康情報コーナーで出会ったのが縁で、20年以上の付き合いだそう。
長年にわたり風邪ひとつひかないという、このお二方の共著が刊行された。タイトルは、『70代現役!「食べ方」に秘密あり』(青春出版社)。主に食の観点からシニアの健康法について書かれたもので、人気を呼んでいる。
免疫力の対策に「日本茶と紅茶」
いい意味で年相応に見えない生島さんだが、健康を強く意識するようになったのは、フリーランスに転身した38歳。
番組の中で、かれこれ200人を超える医療のプロから健康について教わり、「自分に合っているな、できそうだな」と感じるものを、組み合わせて健康管理に役立てているそうだ。
コロナ禍で日本中が揺れていたころ、番組スタッフが立て続けに感染。生島さんが検査を受けたところ陰性であったという。
仕事柄、ステイホームとはいかず、自身も感染・発症するリスクはあったが、今もって元気なのは、日課の「免疫力アップの対策」にあったようだ。
その対策の1つが「日本茶と紅茶」。コロナ禍以降、「ちびちび飲むほか、頻繁にうがいにも使います」と述べている。
これを受けて石原院長は、奈良県立医科大学・矢野寿一教授の実験を紹介している。実験とは、市販の緑茶や紅茶など10銘柄に新型コロナウイルスを混ぜるというもの。
茶葉からいれた紅茶の場合、わずか1分でウイルスが99パーセントも減ったそうです。緑茶の場合も30分後には99パーセント減。ごくわずかに残ったウイルスも、すでに感染力はなかったとのことです。
ウイルスの感染力がなくなることを「不活性化」といいます。新型コロナウイルスを不活性化したのは、紅茶や緑茶に含まれる「カテキン」の作用。新型コロナウイルスの表面から複数の突起が出ており、これを使って人間の細胞に侵入しますが、カテキンは突起に付着して侵入を防ぐのです。(本書より)
さらに、石原院長はこの効果を補強する成分を明かしている。
それは「塩」。
空気が乾燥したときは、番茶1杯(180cc)に天然塩を1.6グラム(小さじ1/3程度)入れた「塩番茶」でうがいをするという。50年間風邪知らずの医師のすすめだけに、説得力がある。
「寝る前断食」で胃薬も不要に
病気知らずの生島さんにも弱点があった。
それは「食べすぎ」。
過食すると、すぐ腸に影響がある性質(たち)だそうで、会食でうっかり食べすぎると「お腹がゴロゴロしたり便秘になったり。倦怠感、睡眠の質の低下」に見舞われるそうだ。仕事の事情で不規則になりがちな食事時間・回数が、これに拍車をかける。
その対策に取り入れたのが「寝る前断食」。就寝4時間前に夕食を終わらせるというシンプルなものだ。
生島さんの朝は早い。番組は5時にスタートなので、まだ暗い3時半に起床する。そのため、就寝は21時半~22時と世間一般の人たちより早め。つまり、夕食は17時半には終えてしまうことになる。
その効果のほどを、生島さんは次のように打ち明けている。
「お腹がすいて眠れなさそう」と思いますか?
とんでもない。まったく逆で、ぐっすり眠れます。睡眠4時間前に夕食を終えるようにしてから明らかに睡眠の質が向上しました。目覚めもスッキリです。胃も休めることができて長年のダメージも回復。胃薬も飲まなくなりました。(本書より)
仮に付き合いなどで食べすぎてしまっても、しばらく固形物を口にせず、健康飲料のみで過ごす。このやり方で、胃腸がリセットできるという。
石原院長は、そもそも人類は飢餓状態に耐え忍んできた時間のほうが長く、その状態に適応しながら進化してきた点を指摘する。そのため、「腹いっぱい食べたい」という欲求を満たしてしまうと、体には大きな負担でしかないという。今でこそ広く認知された「断食」「ファスティング」だが、石原院長はその重要性を30年以上も前から主張してきた。
断食といえば、現代人にはひたすら辛いイメージがある。しかし、石原院長の唱える方法は完全な「絶食」でなく「腹七分」にウェイトを置いたもの。例えば「朝だけ断食メニュー」。朝は生姜紅茶かニンジンリンゴジュースだけだが、昼はそば、夜は量を控えめにすれば「何を食べてもよい」というもの。これなら誰でもできそうだ。
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同世代ならうらやむような健康体を実現しているだけに、「さぞやストイックな毎日を送っている?」と思ったが、「いい加減」くらいがちょうどよいそうだ。生島さんは、本書の終わりのほうで「つい食べすぎちゃった。じゃあ、明日の食事は軽めにして3日単位で調整していこう」くらいで十分だと記す。さまざまな健康法が散りばめられた濃い1冊だが、できることからゆるく実践してみるのが、一番いいかんじだ。
【今日の健康に良い1冊】
『70代現役!「食べ方」に秘密あり』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。