長らく同じ姿勢でいると首や肩がこってしまいますよね。首の関節である頸椎は全身の他の関節よりも柔らかく、スマホ首と呼ばれるストレートネックなど異常が起きやすいのだそうです。
さかいクリニックグループ代表で柔道整復師の酒井慎太郎さんの著書『首・肩の頸椎症は自分で治せる!』では、頸椎のトラブルを助長する意外な生活習慣が紹介されています。
今回はこちらの著書から、首・肩の痛みやしびれを予防&解消する日常生活の知恵を取り上げます。
1.できるだけ睡眠時は枕なしで寝る
「高さのある枕をして眠ると首や肩の筋肉が緊張し続けることになり、それだけでこりやハリを招きます。そんな状態で毎日寝ていたら、ストレートネックという異常を自ら引き寄せるようなものです」と酒井さん。
首や肩の健康を考えると睡眠時の枕は、できるだけ使わないほうがよいそう。
ただ寝返りを打って横向きになった場合のことを考えて、低い枕をあらかじめ左右両脇に置いて寝るようにしましょう。またこれまで何十年も枕を使っていた方は、下の図のように最初から枕を外すのではなく、枕の高さを少しずつ低くしていくとよいそうです。
2.右手でスマホを使う時は左手の握りこぶしを右脇の下に入れる
スマホやPC作業をしている時は頸椎のカーブが失われやすい状態です。
「うつむきや前かがみの姿勢、頭から首、肩までが前方に出た姿勢になりやすく、そうした“悪いクセ”の積み重ねがストレートネックの原因になってしまいます」と酒井さんは話します。
スマホの操作をするときには本体を顔の高さまで上げるようにすること。また長時間使う時は、「本体を持った脇の下に、反対の手で作った握りこぶしをいれます。こうすると、スマホを高い位置にキープしやすく悪い姿勢になりづらいのです」(酒井さん)。
読書をするときにも使えますね。
3.ツボ押しグッズ・マッサージ器は使わない
便利なツボ押しグッズやマッサージ器。つい使いたくなりますが……。
「首や肩の筋肉は、他の部位の筋肉と比べて、薄く繊細な組織です。強い力を1か所に集中して加えてしまうと、筋肉組織が損傷し、炎症を起こしてしまいます」と酒井さん。
炎症を起こして固くなった筋肉をツボ押しグッズでもっと押し込むと、筋肉の奥にある頸椎などの関節を変な方向へ固まらせるおそれがあります。
ツボ押しグッズは逆効果。同じくマッサージを受ける場合でも「物足りないぐらいの強さ、時間での施術にとどめるようにしてください」と酒井さんは話します。
筋肉に対するマッサージ効果は「なでるぐらいの力加減で10分以内」でも十分に発揮されます。
4.首や肩を鳴らすクセをやめる
「パキパキ」「ボキボキ」と首や肩を鳴らすクセありませんか? じつは、このクセも頸椎に負担をかけている可能性が……。
「首や肩の関節はその周囲にある筋肉と同じく繊細な構造になっています。首を勢いよく曲げたり、肩を外すような動きをしたりして、大きな音を鳴らし続けていると、関節のズレやひっかかりが起こりやすくなります。
また、周囲の筋肉には炎症が発生しやすくなり、首や肩のトラブルを助長してしまいます」と酒井さんは忠告します。ただし、自然に動かしているときに「ポキッ」と軽い音がなるぶんにはかまわないそうです。
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首や肩の痛みは現代病といわれ、治りにくいものですが、それはこのような毎日の習慣に痛みのもととなる悪癖が潜んでいるためともいえます。首や肩のトラブルの解消、再発防止に頸椎に負担になる習慣がないかチェックしてみましょう。
【参考図書】
文/庄司真紀
撮影/山上忠
イラスト/中村知史