なかなか良くならない慢性腰痛……。
今年こそなんとか治したい! と思うならインナーマッスルを鍛えましょう。
その効果的なトレーニング法を解説します。
「朝起きる時に腰が痛い…」
「電車で立っていると腰がつらい…」
「1日中座っていると腰が固まってしまう…」
「長く座ったあと立つ時に腰がつらい…」
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)には、このような症状で悩む慢性腰痛の方がたくさん訪ねてこられます。
慢性腰痛の原因には、運動不足やストレスなど様々な原因がありますが、そのひとつとして、腰(体幹)を支える筋力の低下があります。体幹の筋力低下が原因であるのなら、それを回復強化することが大切です。通常は、筋力が回復して腰(体幹)を十分に支えられるようになれば、腰痛が良くなっていきます。
腰を支える体のメカニズム
腰は、背骨や骨盤と周囲の筋肉によって支えられています。
ごく簡単に説明するならば、骨盤が土台で背骨が柱です。その周囲を腹筋や背筋などの筋肉がロープや壁のように取り巻いて腰(体幹)を支えています。
もう一つ重要なのが「腹圧」です。腹圧とは、文字どおりお腹の中の圧力のこと。
車のタイヤが中の空気圧で膨らんで車体を支えているように、腹圧は身体の内側からの圧力で背骨や体幹そのものを支えています。つまり、腰(体幹)は骨盤や背骨を柱として腹筋と背筋と腹圧によって支えられているのです。
腹圧をかけるための筋肉は、主に腹横筋、骨盤底筋、横隔膜などです。これらの筋肉を指して「体幹」「インナーマッスル」とも呼ばれています。
慢性腰痛の場合、とくにこの腹圧で腰を支える機能が低下しています。慢性腰痛を改善するには、腹圧をかけるための筋力を回復させることが重要になってきます。
ドローインとプランク
腰痛改善のためのトレーニング法には様々な方法があります。代表的なものとしては、「ドローイン」や「プランク」といったものがあります。
ドローイン
ドローインは、上図のように腹式呼吸によりインナーマッスルを強化していくトレーニング法です。上図では立っておこなっていますが、仰向けに寝ておこなったり座っておこなったりする方法もあります。
プランク
プランクは上図のように肘をついた腕立て伏せのような姿勢で、数十秒から数分姿勢を維持するトレーニング法です。腹筋強化や腰痛改善、ダイエットなどを目的として紹介されることが多いようです。
しかし、筆者はプランクは腰痛改善の方法としては指導をしません。
その理由は、強度が高すぎてできない方が多いことと、できたとしてもインナーマッスルがうまく働かないために、かえって腰痛を悪化させてしまうことがあるからです。
そもそも、正しくプランクができるのならば慢性腰痛にはならないと思います。
ドローインについては、インナーマッスル、とくに腹横筋の基本的な力の入れ方や腹圧のかけ方を練習するためにおこないます。しかし、単純なドローインができただけでは腰痛は良くならないでしょう。ドローインで養った力を、動作時、とくに痛みが出る動作の際に使えるようにしていくことが重要です。
インナーマッスルをうまく使えるようにする
トレーニングというと、強い負荷をかけて筋肉を増やすようなイメージを持たれるかと思いますが、腰痛改善のためのインナーマッスルトレーニングはあくまでリハビリトレーニングになりますので、はじめはごく簡単な、負荷の小さいものからおこなっていきます。
力を入れるポイントや逆に力を抜くポイントを覚えたり、複数の箇所に同時に意識を向けて動かしたりなど、どちらかというと身体操作の練習といった趣です。
慢性腰痛になってしまうということは、「腰に痛みが起こりやすい動き」をする悪いクセがついているということです。そのクセを治して「腰痛になりにくい良い動きのクセ」を、体で覚えていくことが、慢性腰痛の改善になるのです。
そのためには、次のようなステップでトレーニングをおこないます。
1.体幹インナーマッスルに力を入れる練習=ドローイン等
2.体幹インナーマッスルを使いながら手足を動かす練習
3.体幹インナーマッスルを使った日常動作の練習
このように段階を踏んで「腰痛になりにくい動き」を習得していくのです。
インナーマッスルの効果的なトレーニング法
筆者の腰痛トレーニング研究所では、インナーマッスルの効果的なトレーニング法として、「コアヌードル」という器具を使用したエクササイズをお勧めしております。
コアヌードル
コアヌードルについて詳しくは以下のページをご覧ください。
コアヌードル 狭窄症・すべり症・ヘルニアを改善する運動法(https://www.re-studio.jp/cn17/index.html)
コアヌードルを使用したトレーニングにもたくさんの種目がありますが、今回は手足を動かすトレーニングの一つとして、足踏みトレーニングをご紹介します。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
※このトレーニングをおこなう場合はコアヌードルが必要になります。
足踏みトレーニングの基本姿勢
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
この時に、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますようにしっかりと息を吐き切ることで、腹横筋に力が入るようになります。息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
息を吐き切ると同時に、下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締めます。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。またこの時に背中や腰や脚は力を抜いてください。背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰をしっかり支える姿勢をとりやすくなります。この状態が基本姿勢となります。
足踏みトレーニング
基本姿勢から、両手を胸の前で合わせます。
そこから足踏みをするように、片脚ずつゆっくり上げて、ゆっくり下ろします。
はじめは低めにおこない、慣れて来たら段々脚を高く上げていきます。
脚を上げるときにも恥骨をみぞおちの方に引き上げたままで、腰に力が入って浮かないようにするのが大事なポイントです。
最大で90度程度まで上げます。
脚の上げ下ろしをおこなうと体がかなりふらつきますが、ふらつかないようにお腹で踏ん張ってバランスを取ります。
お腹で踏ん張ってバランスをとることでインナーマッスルに力が入り、トレーニング効果が生まれます。
両手を胸の前で合わせておこなうのが難しい場合は、両手を体の横に下ろしておこなってみましょう。
これを10~30回してください。
腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。この記事が慢性腰痛改善の一助になれば幸いです。
以下の記事でも腰痛改善法をご紹介していますので、ぜひお読みください。
年末年始はぎっくり腰に注意! なってしまった時の対処法とは【川口陽海の腰痛改善教室 第79回】(https://serai.jp/health/1052682)
片側の腰が痛いときに効くツボ(トリガーポイント)とストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第75回】(https://serai.jp/health/1044313)
腰痛改善には骨盤を整える股関節のストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第70回】(https://serai.jp/health/1034491)
腰痛持ちに良い腹筋 悪い腹筋|本当に正しい腰痛トレーニングとは【川口陽海の腰痛改善教室 第69回】(https://serai.jp/health/1032786)
オススメの腰痛・坐骨神経痛改善ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第61回】(https://serai.jp/health/1020567)
拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html