お料理やお皿洗い、掃除機がけ、お風呂掃除など、日常の家事をする時に腰が痛いことはありませんか?
このような症状は、腰の負担を減らす動きを身につけることで改善することができます。
前傾姿勢では腰に強い負担がかかる
お料理や掃除機がけなどで腰がつらくなる時というのは、ほとんどが前傾姿勢の時だと思います。
前傾姿勢の際に腰にどれくらい負担がかかるかというと、普通に立っている時を100とした場合、前傾姿勢では150になるといわれています。1.5倍もの負担がかかるのです。さらに前傾姿勢で荷物を持った場合、負荷は220まで増加するといわれています。
つまり、掃除機をかけたり、お皿を洗ったりする時というのは、腰に1.5~2.2倍もの負担がかかっているというわけです。長時間このような作業を続けていたら、腰が痛くなるのも当然です。
腰の負担を減らす方法
このような症状を改善するポイントは、腰の負担を減らすということ。それには様々な方法がありますが、今回はエクササイズで筋力や動作を改善する、次の2つの方法ご紹介します。
1.股関節を上手に使えるようにする
2.体幹インナーマッスルを使って腰を支えられるようにする
股関節をうまく使えると、骨盤から背骨の角度をコントロールできるようになり、腰の負担を減らすことができます。また体幹インナーマッスルを使えるようになると、腰の筋肉の負担が減ります。
1.股関節をうまく使った動きを練習する
股関節をうまく使った動きというのは、背中を丸めず、背骨をまっすぐにしたまましっかりと股関節を曲げ伸ばしできる動きのことです。
つまり正しいスクワット動作をおこなったときの股関節の動かし方です(下画像)。
この動作を「ヒップヒンジ」といいます。
ヒップはヒップジョイント(Hip Joint)の略で股関節のこと、ヒンジとは蝶番(ちょうつがい)のことです。
このように股関節を蝶番のように使えると、背骨が丸まらずにまっすぐな状態を保って前傾できますから、腰への負担が減るのです。
逆に股関節がうまく使えないと、背骨が丸まった状態で腰から前傾することになりますので、腰への負担が増えてしまいます。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、深いスクワットでは負担が大きいので、ごく軽く膝と股関節を曲げたスクワット動作や、イスを使った立つ座る動作などで練習をします。
上の画像のように、イスから立ち上がる時に骨盤から前傾して股関節を使って立ち上がり、座る時はややお尻を突き出すように股関節をしっかり曲げる、という動作を練習するのです。このようなエクササイズを、1日10~30回ほどおこなって股関節の動きを練習してみてください。
このトレーニングを行うことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
また実際に家事をおこなう際には、下の右側の画像のように、軽く膝と股関節を曲げて前傾しながら作業をすると、腰の負担が減るでしょう。
体幹のインナーマッスルをうまく使う
体幹にある「インナーマッスル」をうまく使えるようになると、お腹側や体幹(胴体)の内側から腰や背骨を支えられるようになりますので、腰の負担を大きく減らすことができます。
インナーマッスルという言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、具体的にどのような筋肉かご存じでしょうか?
本連載においては、主に腹横筋、多裂筋、骨盤底筋などの筋肉を指すことが多くなっています。
今回の症状で特に効果的なのは、「骨盤底筋」を使えるようにすることです。
骨盤底筋とは、その名のとおり骨盤の一番下にあり、肛門を締めて腹圧を高める筋肉です。(下画像)
骨盤底筋に締めるように力を入れると、上方向、つまり骨盤やお腹の内部に圧力をかけるようにはたらきます。
この圧力を「腹圧」といいます。
腹圧は、お腹の中で風船が膨らむかのように、中からの圧力が背中や腰の方向に向けてはたらきます。その力で体幹(胴体)内部から背骨や腰を支えることができますので、特に前傾姿勢の時は腰の負担を減らすことができます。
実際に家事を行う際に、お尻の穴をしっかり締めるようにしながら動いてみてください。
腰の負担が違うことがわかるでしょうか?
もしできない、良くわからないという場合は、骨盤底筋が弱くなっていたり正常に機能しなくなっていたりする可能性があります。骨盤底筋の衰えを感じる場合は、次のようなエクササイズを行って骨盤底筋を回復・強化しましょう。
骨盤底筋のエクササイズ
骨盤底筋は、エクササイズで使い方を練習したり強化したりすることができます。
骨盤底筋のエクササイズにも様々な方法がありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、腹式呼吸をつかって練習する方法を指導しています。
以下を参考に練習してみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
※画像では専用のポールに乗って行っていますが、床に寝たままでも同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てます。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
この時、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますようにしっかりと息を吐ききることで、腹横筋に力が入るようになります。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める。
2ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
またこの時に背中や腰や脚は力を抜いてください。
背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰をしっかり支える姿勢をとりやすくなります。
これらのトレーニングを1日30回を目標に行ってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
腰や背中、脚などに余計な力みがある場合は、かえって痛みを起こすことがありますので、ご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングを行うことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひご覧ください。
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html