■5:まご茶亭(静岡・熱海)の
【まご茶漬け】
――まぐろを引き立てる技ありの京風出汁茶漬け
120名余りの芸妓が今も精進を重ね、古き温泉情緒を残す熱海温泉。三味線や太鼓の音が漏れ聞こえる熱海芸妓見番歌舞練場の隣に立つ『まご茶亭』の看板料理が、熱海芸妓も舌鼓を打つという「まご茶漬け」である。
伊豆地方一帯では「まご茶」といえば、鯵のたたきにお茶を注いだ漁師飯を指すが、京都出身の先代女将が考案したまご茶漬けは、まぐろに昆布と鰹節のみで取った薄味の出汁をかける。
「“まご”とまぐろの語呂合わせで、まぐろを使うことにしたと聞いています」と、女将の鈴木悦子さん(48歳)はいう。
使用するのは南太平洋産のメバチマグロの首から尾まで。厳選した醤油と酒で「ヅケ」にして旨みを引き出している。
「ご飯とまぐろの間に柚子胡椒、塩昆布、あられをしのばせるのもうちの特徴です。家でやってみたけど同じ味にならないよ、とお客様によくいわれます」(鈴木さん)
まぐろの旨みと塩昆布の塩気、あられの香ばしさを柚子胡椒の爽やかな辛みが引き締め、あっさりとして食べ飽きない。生から半生へと刻々と変化するお茶漬けならではの、まぐろの食感が楽しい。
【まご茶亭】
静岡県熱海市中央町17-14
電話:0557・81・3063
営業時間:11時~15時(最終注文)
不定休 22席。要予約。カード不可。
アクセス:東海道新幹線熱海駅から伊豆東海バスで約7分、国際専門学校前下車徒歩約1分。
■6:旬味 まゆとろ(大阪市)の
【まぐろづくし懐石】
――様々な料理法で味わい尽くす まぐろを愛する関西の稀少店
大阪市福島区にある大阪市中央卸売市場本場の真向かいに立つ『旬味 まゆとろ』。市場内に店を構えるまぐろ卸売業者が“関西の人にまぐろの美味しさを知ってもらいたい”と開いた割烹で、様々な部位をしっかりと味わえる、大阪では数少ない店である。
朝4時に行なわれる競りで仕入れたまぐろは市場内で捌かれ、厳選した部位のみが昼営業前に店に届く。種類はクロマグロとキハダマグロが主で、産地は国内外を問わず、その日最良のまぐろを提供。
「脂の乗り具合などの状態をよく確かめ、切り身の厚みを変えたり、軽く炙ったりしています」と話す店長の清原由隆さん(48歳)。
箸が止まらない工夫が凝らされた「まぐろづくし懐石」は、お造り、カマ塩焼き、吸い物、炊き合わせなど全8品。お造りには、濃厚ながら後味爽やかな脳天や、歯ごたえのある頰肉など、稀少部位も使われている。また、カマ先を湯がいて脂と臭みを抜き、醤油、砂糖、生姜で煮付けた炊き合わせはこっくりとした甘辛さと相まって、ご飯が欲しくなる一品。
寒くなると吸い物をねぎま鍋にするという季節感も加味。一期一会のまぐろの美味を堪能できる。
【旬味 まゆとろ】
大阪市福島区野田4-1-39
電話:06・6469・1000
営業時間:11時~13時30分、17時~21時(ともに最終注文)
定休日:日曜、祝日 38席。夜は要予約。
アクセス:JR大阪環状線野田駅または、地下鉄千日前線玉川駅から徒歩約10分。中央市場西口そば。
ウェブサイト:http://mayutoro.net/
※この記事は『サライ』本誌2016年12月号より転載しました。年齢・肩書き等の情報は取材時点のものです。(取材・文/関屋淳子、多田みのり 撮影/高橋昌嗣、藤田修平、小林禎弘)