■3:奥沢 すし 入船(東京・奥沢)の
【稀少部位のにぎり】
――炙ることで生まれる大トロの軽やかな甘み
「私の趣味はまぐろです」と笑顔で話す本多克己さん(75歳)。27歳のときに『すし 入船』を開業し、ほぼ毎日店に立ち、まぐろの味見を欠かさない。鮨種のなかでも、まぐろは特別な存在だという。築地の仲卸『やま幸(ゆき)』から、青森の龍飛崎に近い三厩や大間、その対岸の北海道・戸井などの最上のクロマグロを仕入れる。
大とろの皮部分の肉をそぎ落とす「皮ぎし」などが含まれる、まぐろ尽くしの握りも魅力だが、この店でしか味わえないのが、「大トロあぶり丼」である。
「開店当初、大トロを炙って肴としていたのですが、これを丼にできないものかと、試行錯誤しました。大トロを炙るなんて、もったいないといわれながら、今の形になりました」(本多さん)
丼に山盛りにされた大トロは、軽く火を通すことでさらりとした旨さが際立つ。これに深みを加えているのが、青森県産のニンニクをスライスし、醤油に10日間ほど漬け込んだニンニク醤油だ。まぐろとニンニクの組み合わせは目から鱗。酢飯とともに頬張れば、口福の層がいくつも重なるようだ。
大トロを敬遠しがちの諸氏にぜひ味わってもらいたい。
【奥沢 すし 入船】
東京都世田谷区奥沢3-31-7
電話:03・3720・1212
営業時間:11時~22時 無休 57席。要予約。
アクセス:東急目黒線奥沢駅から徒歩約1分。東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩約10分。
■4:MEGRO(東京・本郷)の
【テールステーキ】
――まぐろの可能性を引き出す創作料理の数々
東京・本郷3丁目の複合ビルの1階奥、『MEGRO(メグロ)』はまぐろと地酒を楽しめる店である。店長の高橋祐介さん(35歳)は東京大学大学院修了後、化学企業に勤めていたが、義父が営むまぐろ仲卸に転職。まぐろの旨さを広めたいと、まぐろ専門店開業へと舵を切った。品書きには個性的な料理が並ぶ。
「スペイン料理のアヒージョ(※オリーブオイルとニンニクで煮込む料理。)や燻製、まぐろのすり身を揚げたナゲット、西京焼きなど、様々な味わい方で、まぐろを堪能してほしいですね。また日本酒にも力を入れていますので、その組み合わせも、ぜひ」と、高橋さん。
「MEGRO全部盛り」は100kg以上の大きさのメバチの頭肉やのど(頬肉の裏側)、白子など7種類の盛り合わせ。大型のまぐろは脂肪分を蓄えているのでアミノ酸が多く旨みが強いという。爽やかな甘みの珍味の白子はキレのよい酒とともに味わえば、さらりと喉をすり抜ける。
続いて運ばれてきたのはメバチの尾をじっくり焼いた「MEGROテールステーキ」。まぐろの持つ野性的かつ繊細な風合いが活きる。
数人で出かけ、多彩な料理を分け合いながら醍醐味に出会いたい。
【MEGRO】
東京都文京区本郷2-40-13 ベルショップ本郷内
電話:03・5844・6369
営業時間:11時30分~14時30分、17時~23時(土曜・祝日の前日は16時30分~23時、日曜・祝日は16時30分~22時)不定休 45席。夜はなるべく予約。
アクセス:東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線本郷三丁目駅1番出口から、徒歩約1分。
ウェブサイト:http://dal-fish19.com/
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