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極上本マグロの大トロ、中トロ、赤身の握り。

「大間のマグロって、本当にそんなに旨いのかなあ」という人がけっこういる。マグロは回遊魚だから、津軽海峡にたどり着く前は、和歌山沖や三陸沖を泳いでいる。その同じマグロが青森県の大間で獲れると、とたんに旨くなるのは、おかしいというのだ。それも一理あるが、大間のマグロが旨いのには、はっきりした理由がある。

最大の理由は、漁獲したあとの処理が非常に上手だということ。つまり一本釣りなどで釣ったマグロは、なるべく暴れさせず、苦しむ時間を最短にとどめることが大切だ。素早く締めて血抜きをし、水氷に沈めて魚体を冷やす。漁船と漁協の、この連携プレーが手際よいのだ。大間の港には夜間も宿直が常駐し、24時間体制で漁獲したマグロを素早く処理する。だからマグロは、さらに旨くなり、高値で取引されることになるのだ。

漁師がそこまでして届けてくれたマグロを味わうなら、それに合わせる日本酒もしっかり吟味したい。では、どういう日本酒なら極上のマグロをさらに美味しく際立たせることができるのだろうか。

「大間のマグロの味は、別格です」と言いきるのは、銀座『鮨 水谷』の主人、水谷八郎さん。水谷さんは、元和9年(1623)に初めて酒を醸した歴史を持つ、賀茂鶴酒造の『賀茂鶴・吟醸辛口』をマグロに合わせる。その理由は、くせがなくて懐の深いこの酒の個性が、マグロの赤身のさわやかな血の香りを研ぎすましてくれるのだという。

「南から北上したマグロが大間海峡で揚がるころは、味に深みがでて、いちばん旨くなります。つまりマグロの味が濃い。それに合うのは、さらっとしたものより、しっかり旨味があって、しかも鮨の微妙な味わいを邪魔しない酒です」(水谷さん)

『賀茂鶴』は、かつては甘口の代表として知られていたが、『賀茂鶴・吟醸辛口』の評判も高い。

 

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