店に足を踏み入れると目につくのが、“瑞穂収穫バゲット”だ。個性的なフォルムとゴツゴツとしたクラスト(表皮)で、貫禄がある。「こねるときも成形も、生地には必要最小限しか手を加えません」とにこやかに話すのは、オーナーシェフの渡邉涼太郎さん。さらに独創的なのが、すべてのパンに“麹”を使って焼いていること。

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かみしめると広がる小麦の香ばしさ。甘みと旨みを感じつつ、ほのかな醤油と味噌の風味も。486円。

麹を使ったパンはどこか懐かしさがあります

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渡邉さんはフランスのパン店日本支店でシェフを務めたのち渡仏。2018年独立。

「日本人がホッとする甘みや旨み、食感は、麹の力で生まれます」

渡邉さんが麹の魅力に気づいたのは、2年に及ぶフランス修業中だった。ロワール地方のトゥールに住む日本人の友人を訪ねたとき、出された味噌汁のおいしさにしみじみ感激したという。今まで身につけてきたパンのレシピは、モルト由来の糖分が旨みに繋がり、一口目のインパクトに重点を置いている。甘さの点では麹も同じ。ならば、と心地いい旨みと食感が出せる麹を使うことにたどり着いた。

帰国してから愛知県の名古屋で独立を果たしたが、図らずも、みりん、味噌、醤油などの独自の麹文化が根づいた地。麹や調味料を厳選し、試行錯誤を経た結果、パンと水、米麹を合わせた“パン甘酒”、麦麹と醤油を合わせた“醤油麹”、米麹と小麦粉、湯を合わせた“湯だね小麦麹”などの手づくり麹がずらりと並ぶほどに。これらをパンの種類によって加える量を変え、生地をつくる。麹を巧みに操る魔術師のようだ。

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味の要である調味料や麹。右上から下へ、バゲット生地、味噌2種、豆味噌、ライ麦と全粒粉の生地、醤油麹、麹、パン甘酒、焼いたバゲットを加えた甘酒、小麦粉、湯だね小麦麹、味噌麹。麹の甘い香りが漂う。

バゲットができ上がるまでは、まず水と麹を混ぜたものに粉を加えてこね、麹の力を最大限活かすため、じっくりと48時間以上発酵。成形は先に述べたように、指先でやさしく整えるのみ。その後ガリッと焼き上げる。香ばしいバゲットは、かみしめるたびにほのかな甘みと旨みがじわじわと広がり、余韻が長い。しかも麹の効果で消化がよく、体にもやさしいというから、毎日でも食べたくなる。

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ハード系や惣菜パンなど、約50種類が並ぶ。
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●涼太郎
住所:愛知県名古屋市瑞穂区彌富町茨山21-1
電話:052・880・4965 
営業時間:11時頃〜17時 
定休日:日曜、月曜 
交通アクセス:地下鉄名城線総合リハビリセンター駅より徒歩約15分

取材・文/石出和香子 撮影/伊藤菜々子

※この記事は『サライ』本誌2026年3月号より転載しました。

3月号大特集は『ジャパニーズウイスキーを極める』

 

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