■2本目:「ラッツェンベルガー バッハラッハー・リースリング カビネット・ファインヘルプ2015」
ドイツワインと聞けば、甘口の白ワインをイメージする方が多いことと思います。確かに、世界中どこも真似のできないジューシーな果実の甘みと噛むようなミネラル感に、ジュワっと酸が効いた味わいが、まさにドイツワインの真骨頂でもありますね。
しかし、実際は辛口の生産量が甘口よりも多く、今回ご紹介するワインも食事に合わせやすい中辛口です。
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ドイツ中西部、ほぼ南北に流れるライン川沿いに100キロにも渡り広がるワインの生産地域ミッテルライン。その南部に位置する、世界遺産にも選ばれた風光明媚なバッハラッハー村に家族で営む「ラッツェンベルガー醸造所」があります。
栽培する葡萄品種はリースリングが大半で、ほとんどの畑はライン川沿いの急斜面に広がっています。当然、機械を入れることは出来ません。なかには70度の急斜面もあり、そこは命綱をつけての手作業になるそうです。
醸造所を取り仕切るのはヨハン・ラッツェンベルガーさん。彼のつくるリースリングは、モーゼル地域ほどの強い酸は持たず、ラインガウ地域のような重厚さともまた違う、ミネラル豊富でバランス感覚に優れた活き活きとした味わいのワインを生み出します。
もちろん、ミッテルライン特有の土壌や気候が関係しているわけですが、今回の「ファインヘルプ」というタイプは、近年使われ始めた味わいを表す言葉で “繊細優美な辛口”といった意味合いです。
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さて、お題料理「鱧の酢のもの」とラッツェンベルガーのリースリングとの相性は、私の予想どおり、なかなか良い感じです。
ワイン単体でも楽しめるメリハリの効いた果実味と酸のある味わいですが、魚の臭味を引き出さず、うまく調和しています。むしろ、ワインの甘さが少し引き出された感じがします。それは「ゆかり」が入った土佐酢のおかげなんでしょうか。付け合わせの青瓜やトマトのけんちん蒸しにも、よく合いました。
これがよりシャープなトロッケン(辛口)や、もっと甘いシュペトレーゼではこうはいかなかったでしょう。
ともすれば、ドイツワイン好きに“中途半端”と言われ、敬遠されがちなファインヘルプやハルプトロッケンですが、この結果は、ほどよい残糖感のある「中辛口」ならではの相性の良さだったのではないでしょうか。
食中酒として幅広く使えて、和食とも合わせやすいような気がしますね。
ただし、わかってはいたことではありますが、「鱧の子の塩辛」との相性は、泣きそうになるくらい最悪でした。基本的に魚卵系はワインの天敵ですので、どうぞご注意を。
次は焼酎です。「富乃宝山」の炭酸割りを合わせてみましょう。