文/藤本一路(酒販店『白菊屋』店長)
料理とお酒の新しい出逢い、その幸せなマリアージュを求めて――。月1回のこの連載では、旬の食材を使った家庭で作れる季節料理を「お題料理」として、私・藤本一路が日本酒・焼酎・ワインなど幅広い選択肢のなかから、これはと思う美酒と合わせて料理との相性を探ります。
料理のご紹介は、大阪・堂島にある割烹『堂島雪花菜(どうじまきらず)』のご主人、間瀬達郎さんです。いわば「旬の一皿×異酒」格闘技編という試みですが、さて、第2回目はどんなご報告ができるでしょうか。
6月のお題料理は「鮎の一夜干し」です。
天然鮎が、禁漁期間を経て解禁になる季節です。
清流の苔を食んで育つ鮎は、爽やかなスイカのような特有の芳香を持つことから“香魚”の名で呼ばれています。いい苔を食べていた鮎ほど、香りはよくなります。その香りと共に、鮎は内臓の苦味が何より珍重される淡水魚です。
鮎の塩焼きなどは頭から食べられる小ぶりなものがお勧め。その鮮烈な香りと苦味が一気に口に入ってきます。
顎(あご)の下から胸にかけてある、胆嚢(たんのう)を含めた鮎の内臓を総称して「うるか」といいます。この鮎の内臓を塩漬けにした「苦うるか」は曰く言い難い、複雑な苦味が心地よい珍味で、とりわけ食通たちに喜ばれているものです。
また、白子でつくる「白うるか」、卵巣のみでつくる「子うるか」も、酒のアテとして重宝されていますが、さて――。
今回の「鮎の一夜干し」は、料理人の間瀬達郎さんによれば「自宅でもつくれますよ」とのこと。
まずは背開きにした鮎を2~3%の塩水に2~3時間ほど漬け込みます。それを串刺しにして、風通しの良いところで陰干しをしてください。(ポイントは干し過ぎないこと。少しやわらかめがおススメだそうです。)
干した鮎を焼き上げた後に、苦玉(にがだま)と呼ばれる胆嚢部分を卵黄で伸ばした「苦うるか」を薄く塗って、出来上がりです。
骨も塩水に漬けて干した後、素揚げをすれば、パリパリッとすべて食べられます。
付け合わせは、新ジャガを味醂、薄口醤油、塩で直炊きしたものを油で揚げて、おぼろ昆布をふりかけています。
皮を剥いたトマトと湯掻いただけのアスパラには自家製の胡麻酢をかけまわしてあります。胡麻酢は、胡麻を擂り潰して、味醂・薄口醤油・酢で好みの味付けでかまいません。
さて、この「鮎の一夜干し」には、どんなお酒が合うでしょうか。
私が選んでみたのは、次の3種のお酒です。
・スパークリングワイン 勝沼醸造「アルガブランカ・ブリリャンテ」
・日本酒 大倉本家「山廃特別純米・備前雄町24BY」
・ドイツビール「シュナイダー・ヴァイセ・オリジナル」
まずはワインから行ってみましょう。最初に合わせるのは、山梨県・勝沼醸造の「アルガブランカ・ブリリャンテ」です。