素材の個性を丁寧に引き出し、開業から数年で3度の全国優勝

独自ブランドの蜜はるかは令和6年の「全国やきいもグランプリ」で優勝。ガツンとした甘さが評価された。焼き芋は1本500円~

平成29年に開業した『神戸芋屋志のもと』は、焼き芋の日本一を決める「全国やきいもグランプリ」で、すでに3度の優勝を果たしている。店主の野元篤志さん(45歳)は、「サツマイモごとに異なる食感や風味などの個性を研究し、丁寧に引き出している」と語る。

野元さんが焼き芋に出会ったのは、開業の半年ほど前。友人からもらったシルクスイートの焼き芋を食べ、深い甘みとその奥にある優しい酸味に衝撃を受けたのがきっかけだ。その後、「この美味しさを伝える仕事をしたい」と一念発起し、勤めていた会社を退職して開業。当時、関西には専門店が数えるほどで手探りが続いた。

「美味しさの理由は、素材の個性や質が7割、焼き方が3割。自分でサツマイモを栽培した時期もありましたが、糖度や質感の調整が非常に難しく、あきらめました」

サツマイモの状態を丁寧に確認する野元さん。

1本ごとに味や香りが違う

「焼き芋3種食べ比べ」660円。右からほくほく系の鳴門金時を独自に熟成させた里浦ゴールド、安納黄金、シルクスイート。
酸味があってまろやかなシルクスイート。
かぼちゃに似た甘さの安納黄金。
べにはるか系ブランドの紅ゆうかの糖度を強化した、プレミアム紅ゆうか。
しっとりほくほく系の里浦ゴールド。
鳴門金時がルーツで加賀伝統野菜でもある五郎島金時。

最高の素材を求めて茨城や埼玉、徳島などの農家を訪ねて話を聞き、これだと思うイモを仕入れた。現在は5軒の農家から年間を通して20品種を送ってもらい、切って触って固さや香りを確かめ、状態を見る。ねかせたほうがいいものは、しばらく冷暗所に置き、食べ頃と判断したら、コンベクションオーブン(熱風を循環させて食材を加熱できる器具)に並べ、低温でじっくり焼き上げる。

サツマイモの個性に合わせ、低温で1.5~2時間かけてじっくり焼き上げる。

令和6年10月に、神戸市内の中心部にある元町商店街の広い店舗に移転。持ち帰って食べるだけでなく、熱々を店内で味わえるようになった。取材時に店頭に並んだ焼き芋は6種。シルクスイートを筆頭に、べにはるかをより甘くした自社ブランドの蜜はるか、安納いもの突然変異品種である安納黄金など。「1本ごとに味や香り、食感などの持ち味が違うため、食べ飽きません」と野元さんは話す。

「蜜芋ソフトクリーム」550円は、注文が入ってから焼き芋とミルクアイスを混ぜ仕上げる。

神戸芋屋 志のもと

兵庫県神戸市中央区元町通3-5-9
電話:078・585・6445
営業時間:11時~20時(売り切れ次第閉店)
定休日:不定
交通:JR元町駅より徒歩約5分

※この記事は『サライ』本誌2025年1月号より転載しました。

『サライ』2025年1月号特集は『極上の「焼き芋」』。

 

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