昔ながらの石焼きで香ばしい香りが際立つ

黙々と作業する店主の松本義男さん。窯の中は微妙な温度差があるので、イモの場所を変えたり、上下を返したりしながら焼く。

茨城県は鹿児島県に次ぐサツマイモの一大産地であるため、「焼き芋」の名店も少なくない。

つくば市生まれの松本義男さん(78歳)が、県産のサツマイモを原料に石焼き芋の専門店『つくば石焼いも屋』を開業したのは、55歳のときだった。「地元の味を広めたい」という気持ちで始めると、地元ファンの間で“焼き芋仙人”のあだ名がつき、県外からも客足の絶えない全国区の名店となった。

以前は建設業に携わっていた松本さんは元来、職人気質。自身で建てた作業小屋兼店舗の奥に、鉄製の特注窯が鎮座する。上部の蓋を開けると、石の上にサツマイモが隙間なく並んでいる。石を温める熱源は薪だ。松本さんはいう。

薪をくべながら、長年の勘と経験で火力を調整する。

「薪は火力の調整が難しいけれど、だからこそ面白い。昔、近所の年寄りたちからサツマイモは70〜80℃で焼くと旨いと教わりました。私もその温度で、2〜3時間かけて焼いています。温度計は使いません。この間、窯の脇の椅子に腰かけて待っているのですが、脚にあたる熱の具合で窯の中の温度がだいたいわかるからです」

石は熱伝導率のよさが利点。市販の川石を使用。直置きするとイモが傷つくので焼き網を据える。

べにはるかが三拍子揃う

店で焼くサツマイモの品種は、松本さん自身の“目利き”で一番よいものを選んでいる。開店当初はほくほく系のベニアズマを、続いてしっとり系のべにまさりを扱い、最近はべにはるか一筋という。「甘くて、ねっとり柔らかく、肉質が真っ黄色。今、求められている三拍子が揃っています」

令和5年は収穫後の糖化が思うように進まなかったため、11月から4月まで店を臨時休業したほど、素材の質に対する目は厳しい。

石焼き芋は量り売りで100g180円。10年以上、値上げはしていない。窯から出したてが供され、ねっとりと香ばしい。

購入時は窯から出したての焼き芋を手渡される。石焼きならではの香ばしい香りが際立ち、しみじみと甘い。郷愁を誘う味わいだ。

つくば石焼いも屋

茨城県つくば市倉掛889-4
電話:090・7941・8425
営業時間:11時〜17時(売り切れ次第終了)
定休日:水曜(不定休あり)、年末年始
交通:つくばエクスプレスつくば駅から徒歩約30分

※この記事は『サライ』本誌2025年1月号より転載しました。

『サライ』2025年1月号特集は『極上の「焼き芋」』。

 

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