江戸時代から続いてきた鮨、天ぷら、蕎麦、そして昭和の時代に発達した焼き鳥は東京の食文化。老舗から新店まで、足を運びたい店を紹介する。

コースに仕立てた端正な料理から蕎麦の真髄を味わう

由庵 矢もり 月島

選りすぐりの天日干しした蕎麦の実を使用。石臼で手挽きし、蕎麦粉100%で打つざる蕎麦。奥ゆかしい甘み、喉越しの良さに唸る。コース1万3200円〜。

下町の風情が残る月島の小路に店を構える『由庵 矢もり』は、唯一無二の蕎麦屋だ。店主の矢守昭久さん(49歳)は、立ち食い蕎麦から老舗まで様々な業態の蕎麦屋で働いたのち独立。「自分なりの蕎麦屋にしたい」と、蕎麦にまつわる料理と江戸料理で構成するおまかせコースのみを提供する。

蕎麦に欠かせない返しを使ったメジマグロのヅケや、梅干しと日本酒を煮詰めた江戸時代の調味料である煎り酒を用いた自家製蒟蒻。ある日のコースには、こんな手をかけた酒肴の数々が登場した。

手前から時計回りに、和芥子で味わうメジマグロの蕎麦の返しヅケ、歯応えのよい自家製蒟蒻の煎り酒漬け、しっとりと炊き上げた桜海老のおから。

特筆すべきはコースの中盤に出る蕎麦がきだ。客の目の前で、矢守さんが石臼で挽いた挽きたての蕎麦粉で作られる。挽きたてならではの深い香りに陶酔できる。

挽きたての蕎麦粉を一般的な量よりも多めの湯で練り上げた蕎麦がき。香り高く、心地よい粘りとふわふわとした口溶けを併せ持つ。

蕎麦打ちも独自の方法と味を追求。矢守さんはこう語る。

「材質の異なる4台の石臼を使い、手挽きで蕎麦粉を挽き分け、粒感の異なる粉を合わせて打ちます。そうすることでつなぎを使わずに、十割で二八のような滑らかな喉越しの蕎麦に仕上がります」

締めのざる蕎麦は、30年間注ぎ足してきた返しを用いたつゆで味わう。土壁に囲まれた端正な空間で手繰る蕎麦は、極めて滋味深い。

店主の矢守昭久さん。
昭和49年、東京生まれ。客の目の前で、石臼で蕎麦の実を挽く。馥郁とした香りがする。

由庵 矢もり

東京都中央区月島3-9-7 
電話:03・6225・0633
営業時間:18時〜19時30分(最終入店)
定休日:不定 6席。前日までに要予約(2名から)。カード不可。

都営地下鉄・東京メトロ月島駅から徒歩約5分。細い路地にある一軒家で、店には靴を脱いで上がる。

※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。取材・文/安井洋子 撮影/海老原俊之

 

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