江戸時代から続いてきた鮨、天ぷら、蕎麦、そして昭和の時代に発達した焼き鳥は東京の食文化。老舗から新店まで、足を運びたい店を紹介する。

充実の蕎麦前で酒を楽しみ、変わり蕎麦で季節を味わう

手打蕎麦切 松翁 神保町

生粉打ち蕎麦と、日替わりの変わり蕎麦の「二色盛り」1100円。この日の変わり蕎麦は紫蘇切り。爽快な香りが鼻を抜け、涼を呼ぶ。つゆは濃口、淡口から選べる。

文化人に愛され続ける御茶ノ水『山の上ホテル』から近い路地裏に、『松翁』はひっそりと佇(たたず)む。創業は昭和56年(1981)。「作家の池波正太郎さんも贔屓にしてくださいました」と、店主の小野寺松夫さん(73歳)は思い出を語る。

研究熱心な店主が打つ蕎麦は、農家から直接仕入れた茨城県産常陸秋そばを自家製粉して打つ、蕎麦粉100%の生粉打ちだ。

「開店当初は、つなぎの小麦粉を2割混ぜる二八蕎麦でした。25年ほど前、当時はまだ珍しかった自家製粉をすることで、鮮度の良い蕎麦粉ならつなぎは不要と実感し、生粉打ちに変えました」(小野寺さん)

その蕎麦は角が立ち、繊細な喉越しを楽しめる。鹿児島県枕崎産の本枯れ節を贅沢に使い、真昆布 、干し椎茸と共にとった出汁で作るつゆが蕎麦の風味を底上げする。

季節の素材を練り込んだ変わり蕎麦も味わいたい。夏には紫蘇切りや夏みかん切りが登場。季節を蕎麦で感じるのも一興だろう。

焼き味噌に穴子煮こごり、注文後に捌いた魚を揚げる天ぷらなどの美味なる蕎麦前も充実。日本酒も20種ほど揃い、蕎麦好きの左党なら昼間から飲みたくなる名店だ。

夏の一品料理として品書きに上る、鱧の湯引き1200円。柔らかな白身を梅肉でさっぱりと味わう。日本酒は1合720円~。
店主の小野寺松夫さん。
昭和25年、東京生まれ。脱サラして蕎麦屋で修業後、独学で蕎麦打ちを習得。名前の「夫」を「翁」に変え、店名に。

手打蕎麦切 松翁

東京都千代田区神田猿楽町2-1-7
電話:03・3291・3529
営業時間:11時30分~14時、17時~20時(ともに最終注文)
定休日日曜、祝日 26席。

東京メトロ・都営地下鉄神保町駅より徒歩約6分。JR御茶ノ水駅、水道橋駅より徒歩約8分。

※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。取材・文/安井洋子 撮影/海老原俊之

 

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