評判の老舗店で味わう
ここでは、とんかつ激戦区の上野で、とりわけ評判の老舗3店をご紹介する。とんかつと一口にいっても、それぞれの店では独自のやり方で、豚肉の旨味を引き出している。どの店でも会計を済ませた客の誰もが、満足げで幸せそうな顔をしていたのが印象に残る。
名匠・小津安二郎がこよなく愛したヒレカツ発祥の名店
蓬萊屋
蓬萊屋
東京都台東区上野3-28-5
電話:03・3831・5783(予約可)
営業時間:11時30分~14時30分(最終注文14時)、
土曜・日曜・祝日は17時~20時30分(最終注文19時30分)も営業
定休日:水曜
交通:JR御徒町駅より徒歩約3分 35席。
落語家、林家正蔵さんが上野の「三大うまいもの」を挙げてくれた。それは「そば」「うなぎ」「とんかつ」だという。特にとんかつの名店が上野には多く、ときに「とんかつの聖地」と呼ばれることもある。
なぜ上野にとんかつ店が多いのか? 今回、取材で訪れた『井泉本店』の主人、石坂桃子さんによれば
「上野は昔から洋食屋さんが多く、牛肉のカツレツを出していました。そんなお店が豚肉のカツを提供すると好評で、次第に広まっていったと聞いています」
という。
文献(※『明治洋食事始め とんかつの誕生』(講談社学術文庫))によると、銀座の『煉瓦亭』が明治28年(1895)に「ポークカツレツ」を売り出し洋食として浸透していった。昭和初年に上野で分厚い肉の「とんかつ」が売り出され、定番の洋食として根付いていったという。
「お箸できれるやわらかいとんかつ」が評判。かつサンド発祥の店
井泉本店
井泉本店
東京都文京区湯島3-40-3
電話:03・3834・2901(予約可)
営業時間:11時30分~20時(最終注文19時50分)
定休日:水曜(祝日の場合は営業)
交通:JR御徒町駅より徒歩約3分 50席。
低温でじっくり揚げ熱を通しすぎず肉の旨味を引き出す
上野とん八亭
上野とん八亭
東京都台東区上野4-3-4
電話:03・3831・4209
営業時間:11時30分~14時30分(売り切れ終了)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、臨時休業あり
交通:JR御徒町駅北口より徒歩約
4分 14席。
※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。取材・文/宇野正樹 撮影/藤田修平