もはや「ご飯のおかず」という考え方だけで食してはいけない。新たな可能性を探り続け、歴史に名を残すかもしれない店とは。
長時間、手間暇かけて熟成させた豚肉で提供
なごや豚八堂(愛知)
北イタリアなどで修業した経験から現地で熟成豚に魅了され、熟成豚専門店『なごや 豚八堂』をオープンさせたのが店主の小野薫さん(54歳)だ。
店内でひときわ目を引くのは小野さんが特注した熟成用の冷蔵庫だ。ガラス越しに大きな豚肉の塊や様々な部位を熟成している様子が窺える。この冷蔵庫はドライエイジング(※専用の冷蔵庫の中で風を当てながら乾かして旨味を熟成する方法。ウェットエイジングは真空包装で熟成させる。)にする豚の部位の大きさなどを基に、半年かけてサイズや仕様などを設計したそうだ。
使っている豚肉は、一般的な三元豚。小野さんによるとドライエイジングの長期熟成には霜降りのサシが入っていない方が適しているという。熟成期間は30日から40日間にしている。それは酵素の働きで肉が柔らかくなり、アミノ酸が増えて、ちょうど最高の旨味を味わえるからだという。
「まるで生ハムのような香りがしてきます」と小野さん。ただしドライエイジングは表面に付着した微生物やカビを取り除くので歩留まりが悪い。よって1日5食の限定品にしている。
ランチのとんかつは、真空パックで40日から50日間ウェットエイジングしたものだ。肉質の柔らかさはドライエイジングに負けず劣らずだ。
シャンパンや白ワインと
ウェットエイジングの場合は塩糀に2日間ほど漬けてから提供。小野さんによると、「塩糀の酵素の働きで柔らかさが増し、豚肉の香りや旨味を引き出してくれる」という。これが看板メニューの「塩糀とんかつ」だ。
中でも、「塩糀特上リブロース芯とんかつ」は、脂肪や筋を取り除いたリブロースの芯の部分を使ったもの。しっとりとした肉の柔らかさやほんのりとした甘み、衣のザクザクした食感が一体となる。ワイン好きの小野さんのおすすめはコクのあるシャンパンや白ワインと楽しむこと。
「シャンパンの泡や白ワインの酸味で爽やかな後味となります」
日本酒やウイスキーの品揃えも豊富で、とことん堪能できそうだ。
愛知県名古屋市中区栄2-8-11 永楽ビル地下1階
電話:052・222・8388
営業時間:11時30分〜14時30分(14時最終注文)、17時〜24時(料理22時、飲み物23時30分最終注文)
定休日:日曜、祝日
交通:地下鉄東山線伏見駅より徒歩約4分
※この記事は『サライ』2022年5月号より転載しました。