2025年、団塊世代約800万人が後期高齢者となる日本。団塊ジュニア世代も定年を見据え、老後について考え始めた人も多いのではないでしょうか。とはいえ、現役世代の人口は急減し、退職金や年金は減額が予想され、お金の不安はつのるばかりです。
定年前後のマネープランについて詳しいマネーコンサルタントの頼藤太希さんは、定年後に充実した生活を送るのに必要なことは、必要な知識を手に入れることと準備を始めることだと言います。今回は定年前後のお金との付き合い方を6つのルールにまとめた頼藤太希さん監修の『定年後ずっと使えるお金のルール』(宝島社)から、手取りベースで年金を最大化する方法についてご紹介します。
お金の不安に振り回されず、余裕のある老後を過ごすために、必要な知識を手に入れ、今からできることを始めてみませんか?
監修/頼藤太希
年金には税金や社会保険料がかかる! 手取りベースで繰り下げ受給額を最大化しよう
年金は10~15%ほど天引きされて振り込まれる
会社から給料をもらうとき、税金や社会保険料が天引きされ、その分手取り額が減ります。実は年金も同じです。
65歳未満なら年額108万円、65歳以上なら年額158万円以上の老齢年金を受け取る人は、年金から所得税が源泉徴収され、65歳以上で年額18万円以上の年金を受け取る人は、国民健康保険料や介護保険料などが天引きされます。
そのため、実際に振り込まれる金額は、ねんきん定期便などで見た年金見込額より10~15%少ない金額です。ですから、額面ベースで比較しても、年金受給の正しい損益分岐点はわかりません。
年金から収める税金・社会保険料
たとえば、70歳まで繰り下げした場合は、額面ベースだと81歳11か月で65歳からもらうより得となります。
しかし、下の表からわかるように、手取りベースでは84歳1か月まで生きないと65歳受給の総額を追い抜くことはできません。つまり、84歳1か月より長く生きそうだという人は、70歳繰り下げを視野に入れて検討するとよいでしょう。
自分の将来の手取り額をざっくりと予想してみよう
年金の受取総額は寿命で変わる! 「いつまで生きるか?」でお得な受給時期を考える
65歳まで健康ならば平均余命を参考にしよう
「長生きするなら、繰り下げ受給がお得!」と言われても、いつまで生きるのかを想定するのは、非常に難しいと思います。そこで、参考にしたいのが、厚生労働省が毎年発表している「簡易生命表」です。これは、日本にいる日本人の死亡率や平均余命などを算出したデータですが、人生100年時代といわれるだけあって、確かに多くの人が長生きするだろうということがわかります。
これから約30年後には、男性の4割、女性の7割が90歳まで生存することが予想されています。また、65歳を迎えた人があと何年生きるかという期待値を表した平均余命に注目すると、男性は約20年、女性は約25年生きられそうだということがわかります。
つまり、健康な状態で65歳を迎えた人ならば、男性なら85歳、女性なら90歳まで年金をもらうということが想定されます。よって、70歳繰り下げ受給を選んでも、損益分岐点を超えるので、65歳からもらい始めるより、受取総額が多くなると予想できます。
65歳を迎えた人が90歳まで生存する確率はかなり高い
68歳からの受け取りが目安のひとつ
下の表は、65歳で額面180万円の老齢年金をもらう人が、75歳までの繰り下げ受給開始年齢ごとに、90歳時点での年金額面総額と手取り総額を比較したものです。このケースでは、71歳から受け取りを開始した場合に、最も手取り額が多くなることがわかりました。
しかし、70歳以降まで年金を繰り下げするには、それまでの収入を確保しなければならないなどの課題もあります。
90歳まで生きた場合、一番得する受け取り開始年齢は?
また内閣府の高齢社会白書令和4年版によると、健康寿命(日常生活に制限のない期間)は、男性で72.68歳、女性で75 .38歳です。もらい始めるタイミングが遅いと、楽しむためにお金を使うということができないかもしれません。
下のグラフは、各受給開始年齢から年金手取り総額が最も多くなる寿命を表したものです。ちょうど男性の平均寿命に近い84~86歳で手取り額が最大になるのは、68歳からもらい始めた場合です。68歳ならば、65歳から3年待てば済み、健康寿命までに楽しむためのお金を使う時間もありそうです。
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頼藤太希(よりふじ・たいき)
株式会社Money&You代表取締役。マネーコンサルタント。中央大学客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。月間400万PV超の女性向けWebメディア「Mocha(モカ)」や登録者数1万人超のYouTubeチャンネル「Money&YouTV」を運営。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計120万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。