蟹好きが唸り、駅弁ファン垂涎の「蟹の駅弁」。じつは取り寄せ可能な弁当があるのをご存知だろうか。自宅に居ながらにして美味なる蟹を頬張ることができる、名物弁当「蟹の駅弁」を4品ご紹介しよう。
全国初の蟹の駅弁といえば、真っ先に名が挙がる
『元祖かに寿し』(鳥取)
アベ鳥取堂 JR山陰本線ほか鳥取駅
蟹寿司や蟹飯を称する駅弁は数あれど、元祖は『アベ鳥取堂』だ。明治43年(1910)に菓子の製造や酒類販売の商店として創業し、昭和18年(1943)から駅弁も手がけ現在に至る。3代目社長・阿部正昭さん(65歳)によると、「戦争が終わり、人々の暮らしが落ち着いてきた頃、鳥取を訪れる旅行客に喜んでもらえる駅弁をつくるべく、山陰の味覚・松葉がにを使った『かに寿し』が完成しました」。昭和27年のことだった。
地元の美味を詰め込んだ
流通のない時代である。他県へ松葉がにが流出することは少なく、蟹が大量にあったともいう。その後、独自の保存技術を開発し通年販売が可能に。すると各地で蟹寿司が製造されたため元祖を冠するように。現在も蟹の身をはじめ、酢、錦糸玉子、米、漬物などすべてが自社開発の品。元祖の矜持を味わいたい。1個1480円。
アベ鳥取堂
鳥取市富安2-28
オンライン:https://www.abetori.co.jp
電話注文:0857・26・1311
味よし、器よしの人気駅弁
『越前かにめし』(福井)
番匠本店 JR北陸本線ほか福井駅
日本海沿岸で獲れるズワイガニの雌(セイコガニ)は、小さいながらも濃厚な旨みが特徴。珍味としても好まれる甲羅のなかの赤肉や内子(うちこ) 、蟹みそを混ぜて炊いたご飯の上にベニズワイガニの身を敷き詰めてある。駅弁では酢を効かせることが多いなか炊き込みご飯風に仕上げ、ほかの具材はいっさい入れずに蟹の味だけを追求している。昭和36年(1961)に発売を開始し、60年以上にわたり福井駅の名物駅弁となっている。1個1380円。
番匠本店
福井市高木中央3-507
オンライン:http://www.banjyo.jp
電話注文:0776・57・0849
香住ガニと酢飯のバランスが絶妙な、ちらし寿司風駅弁
『米田茶店かに寿し』(兵庫)
淡路屋 JR山陰本線 城崎温泉駅
『米田茶店』とはかつて存在したJR山陰本線・浜坂駅前の駅弁屋。4年前に閉業したが、浜坂駅の名物として親しまれていた「かに寿し」のレシピを神戸の『淡路屋』が継承し販売を再開した。香住ガニ(ズワイガニ)を使用し、特製合わせ酢の酢飯で仕上げる。レトロなデザインの掛け紙にも旅情をそそられる。1個1200円。
淡路屋
兵庫県神戸市東灘区魚崎南町3-6-18
オンライン:https://all.awajiya.co.jp/
電話注文:078・431・1682
ベニズワイガニの脚肉とそぼろの組み合わせを味わう
『紅(くれない)の蟹弁当』 (石川)
高野商店 JR北陸本線 加賀温泉駅
JR北陸本線で最初に駅弁の販売を開始した『高野商店』の創業は明治29年(1896)。北陸の幸を使った多くの駅弁のなかでも今季の最新作がこちら。ご飯の上にベニズワイガニの脚肉とそぼろを敷き詰め、蟹の旨みと甘みを堪能できる。特製の蟹酢ジュレ(画像中央)を付けて食べる。1個1400円。
高野商店
石川県加賀市小菅波町平良50
オンライン:http://www.obentou-takano.com/
電話注文:0761・72・3311
取材・文/山崎(正しくは「たつさき」)真由子、永田さち子 撮影/寺澤太郎 駅スタンプ写真提供/つぼうちまさみ
※この記事は『サライ』2023年2月号より転載しました。