食材としてつとに評価の高い和牛。最近は脂身の少ない赤身が求められる傾向にある。その旨さを引き出す名料理人の技を知り、家庭で実践できるとっておきの調理法を学ぶ。

熟成肉の深い味わいを食べ比べる

火力が強くなった炭で、肉を焼いていく。表面がパリッとしたら、炭から外してホイルで包み休ませる。これを何度も繰り返す。

「『サカエヤ』の新保吉伸さんと二人三脚でやってきたといっても過言ではありません」と話してくれたのは、料理長の伊藤和音さん(29歳)。

愛知県名古屋市内でイタリアンなどを展開する店主・山口太郎さん(44歳)が、『サカエヤ』の肉に出会い、これを提供するステーキ割烹を始めたいと昨年8月に開業。それに伴い、伊藤さんは『サカエヤ』へ研修に赴き、熟成と保存、その料理手法について学んだ。

「完全放牧野生牛の “ジビーフ” や経産牛(※出産を経験した雌牛のこと)など、あまり注目されない牛肉でも最良の状態に熟成させて、どれだけ美味しくできるか、どう調理すれば美味しくなるかを学びました」と伊藤さん。

目前で切り出される3種の牛肉。左から北海道のジビーフ、鹿児島県産経産牛熟成サーロイン、経産牛のヒレ肉。店に届いてから熟成冷蔵庫で1か月~1か月半ほどおく。
肉の特性に合わせて焼き加減を変える。途中何度も芯の部分の温度を確認しながら焼く。
焼き上がった肉はカットして皿に。通常は焼けた順に供される。表面は薄く焦げ色がつき、中はピンク色のような赤さ。

おまかせのコースは、コンソメスープに始まり、タルタルや煮込みなど5種の肉料理の後、ステーキ3種が供される。北海道のジビーフや鹿児島県産経産牛のサーロインなど、伊藤さんがその日の素材を見極めて炭焼きにする。

「長州備長炭を用いて約40~50分かけて焼き上げます。強火で焼いて休め、弱火で焼いて休める。肉汁をしっかり閉じ込めるのが旨みを引き出す要(かなめ)です」(伊藤さん)

表面はカリッとしているのに、中はふっくらと柔らか。炭の香りを纏いつつ、旨みも食感も3種それぞれ違う。まずはそのままで味わい、薬味で変化も楽しみたい。

コースで出される近江牛のタルタル。昼は7品のコースで1万3200円〜、夜は8品(肉3種)のコースで1万9800円〜。
伊藤和音さん。平成5年、岐阜県生まれ。系列店のイタリアンで6年間修業の後、この店の料理長に抜擢された。

オーロックス

愛知県名古屋市西区那古野1-23-2 四間道糸重 1階
電話:090・7307・9203
営業時間:12時〜15時、18時〜23時
定休日:不定

※この記事は『サライ』2022年9月号より転載しました。

 

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