食材としてつとに評価の高い和牛。最近は脂身の少ない赤身が求められる傾向にある。その旨さを引き出す名料理人の技を知り、家庭で実践できるとっておきの調理法を学ぶ。

薪の熾火で時間をかけて旨さを引き出す

東京・赤坂『ヴァッカロッサ』では、約20分もの時間をかけて、薪の熾火(おきび)で土佐あかうしを焼き上げる。
厳選赤身牛のビステッカ(※イタリア語でステーキの意)コース(土佐あかうし骨付きロース1人前約350g)1万7600円。写真は2人前。切り口から肉汁は少しも滲まない。グラスワインは1杯900〜1900円。

焼き上がった肉の表面は、茶色というより黒い色をしている。カットした断面に肉汁の滲みはなく、美味しさのすべてが閉じ込められているのだろうと想像できる。

口にすると、焼き色から連想する焦げた味は微塵も感じられない。凝縮した香ばしさと、程よい弾力。決して固くはなく、心地のよい歯ごたえだ。噛むほどに溢れ出る肉汁がソースとなり、口の中でひとつの味わいが完成されていく。

店内に設えた暖炉で、薪まきの熾火(おきび)を使って肉を焼くのはシェフの渡邊雅之さん(53歳)。薪を使うのは、厚みのある赤身牛を焼くのに適しているからだという。

「森を育てるために伐採している間伐材を使っています。森を育てていく考えに共感しています」

頭数の少ない貴重な牛

「土佐あかうし」のロース肉の塊、約8.5kg。健康に育った牛の肉は、渡邊さんがイタリアで焼いていた肉に通じるものがあるという。

肉は「土佐あかうし」。高知県で育てられる褐毛(あかげ)和種で、アミノ酸の含有量が多く、しっかりとした旨みがある。薪の熱は、この土佐あかうしなど赤身の肉を焼くのに適していると渡邊さんは話す。

肉の温度変化による劣化を最小限にするため、冷蔵庫から取り出すとすぐに肉を切り、焼いていく。薪の熾火の上に置いたグリル板の上で、肉を頻繁に動かしながら、薄い焼き色を幾重にも重ねていく。その結果が黒い焼き色だ。通常、肉を焼いた後は休ませてから切らないと肉汁が出てしまうが、この焼き方では焼きたてを切っても肉汁が出ない。旨みを最大限に引き出された焼きたての肉を、すぐに口にできるのだ。

この肉を食べる前におすすめしたいのが、「土佐生姜のスパゲティ」。ふんだんに入った生姜が消化を促してくれる。

様子を見ながらこまめに肉を動かすこと約20分。強火の近火で薄い焼き色を重ねることが大切で、黒く仕上がっても焦げているわけではない。
渡邊雅之さん。昭和44年、千葉県生まれ。薪焼きのビステッカを出すイタリア・トスカーナ地方の『ラ・キウーザ』で修業した。

ヴァッカロッサ

東京都港区赤坂6-4-11 ドミエメロード1階
電話:03・6435・5670 
営業時間:11時30分(土曜のみ12時)~13時30分(最終注文)、18時~23時(最終注文21時)
定休日:日曜、祝日

取材・文/浅妻千映子 撮影/福田栄美子
※この記事は『サライ』2022年9月号より転載しました。

 

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