もっと「漫画家と作品の息吹に触れる旅」

『サライ』9月号の大特集は、「日本漫画は大人の教養」。本誌特集では誌面に収まり切らなかったエピソードや情報を紹介する。

取材・文/山内貴範 写真/宮地工

『まんが道』ゆかりの文苑堂書店で気になる本を見つけて手を伸ばす江口さん。熊本県水俣市で過ごした少年時代、やはり行きつけの書店があったという。

満賀道雄と才野茂のふたりが、漫画家を目指す――漫画に情熱を傾ける若者の成長物語である『まんが道』(作/藤子不二雄(A))。作中には高岡大仏や高岡古城公園など、富山県高岡市の名所が実名で登場するが、ファンならぜひとも訪れたい重要なスポットのひとつが「文苑堂書店」だろう。

満賀と才野は、手塚治虫さんの漫画の多くを、高岡駅前にある文苑堂書店で買い求めている。ふたりはトキワ荘で生活する人気漫画家になり、故郷に帰省した際も訪問している。『まんが道』を歩むふたりを陰から支えた存在といっていい。実際、藤子不二雄(A)さんの自宅は高岡駅前にあったため、徒歩ですぐの文苑堂書店にはたびたび通っていたようだ。

そんな歴史ある高岡駅前の店舗は、平成31年(2019)に惜しくも閉店してしまったが、同店は郊外にいくつも大型店を構えている。『まんが道』に登場する書店として探訪したい名店だ。

町の本屋として創業した文苑堂書店は、今や8店舗を有する富山県有数の巨大なグループに成長。一方で、店名の筆文字の書体は、戦後間もないころの面影を残している。「藤子両先生が通っていたことは、当社の誇り」と話すのは、文苑堂書店福田本店の店長、平野哲史さんである。同店は広々とした開放的な店内に、常時、数万冊の本が並ぶ。

店舗の一画には藤子不二雄(A)さん、藤子・F・不二雄さんを顕彰するコーナーもある。探訪の記念に、『まんが道』を買い求めるのも一興ではないだろうか。

江口さんの思い出深き書店

熊本県水俣市で生まれた江口寿史さんも、忘れ得ぬ書店があるという。

「僕の人生に影響を与えたのは、地元の『宮崎一心堂』ですね。僕は物心ついたころから絵が好きで、テレビアニメーションの『鉄腕アトム』や『隠密剣士』、『月光仮面』のキャラクターを描くことが多かったんですよ。そんなとき、親父と町にいったときに立ち寄った宮崎一心堂で、『鉄腕アトム』が載っている本があることを知ったんです」

江口さんは、先にアニメーションから『鉄腕アトム』を知り、漫画という存在を知らなかったという。それからは漫画に夢中になってしまい、親にねだっては、アトムが載っている雑誌『少年』を定期購読するようになった。

「雑誌が出るたびに本屋さんが家に宅配してくれていたので、発売日が楽しみで仕方なかったですね。宮崎一心堂は、僕が漫画家になるための土壌を作ってくれた書店ですね」

書店が漫画家の卵を育てた

トキワ荘に集った漫画家には、宮城県出身の石ノ森章太郎、新潟県出身の寺田ヒロオなど、地方出身者が少なくなかった。彼らは雑誌『漫画少年』の常連投稿者で、住んでいる場所は離れていても、お互いに力を認め合っていた。

日本で漫画が発展したのは、地方にいながら等しく漫画を買い求めることができる書店の文化や流通システムによる部分も大きいのではないだろうか。そして、地方の書店は、新人漫画家の発掘と育成に一役買っていたのである。

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