誰しもが憧れる「丁寧な暮らし」のイメージは、毎日手の込んだ料理をして、整った部屋でゆったりと食事をするというものではないでしょうか? 憧れに反して、仕事・子育て・勉強・介護などで忙しく、毎日の食事の支度に追われるのが現実。そこで、2016年に作りおきダイエットの大ブームを起こした、料理研究家・柳澤英子さんの著書『料理のその手間、いりません』から、柳澤さんが創意工夫を重ねて見出した「手間を省いてかろやかな気持ちで料理をするコツ」をご紹介します。

文/柳澤英子

栄養バランスを気にしすぎない

健康のためには栄養バランスが大切ですが、1回の食事ごとに栄養素を計算しながら献立を考えるのは難しいもの。「たんぱく質を何グラムとらないと……」なんて意識し始めるときりがないですし、かえってストレスに感じてしまうことも。

主菜と副菜の基本的な組み合わせと、食材の色味を多くすることを意識すれば、自ずと栄養バランスも整います。旬の食材は安価で栄養価も高いのでおすすめ。お気に入りのレシピの食材を旬のものに置き換えるなど、料理にも自由度をもたせると無理なくとり入れることができます。1回の食事で完璧に実践できなくても、3日から1週間くらいのスパンで見て、ゆる〜く整えばOK!

ここで注意! ひとつの食材や料理だけを食べ続けるのは絶対にNG。「ばっか食べ」をするとバランスが偏り、栄養失調にもなりかねません。

「昨日の昼は肉だったから今日は魚」というように、前日の同じ時間に食べたものを思い出して、異なるものを食べるように心がけましょう。細かく管理したい人には、レコーディングがおすすめ。食べたものを書き出してみると、見落としがちな食材に気づきます。今は便利なアプリもあるので、試してみてはいかがでしょうか?

【手間抜きポイント】
昨日と違うものを食べていれば、栄養バランスは偏りません。

無理して毎日自炊する必要はない

以前、毎日自炊をしようと思って大量の食材を買いこんだものの、仕事が忙しくて手が回らず、それらをすべて腐らせたことがあります。毎日冷蔵庫で朽ちていく食材たちを横目に、心は罪悪感でいっぱいに。この経験から、声を大
にしていいます。忙しくて時間がない日は無理せず、外食や市販のお惣菜に頼った方がいい! 手間をかけたおかずを何品も揃えて……だなんて、自炊のハードルを上げてしまうとなかなか続きません。

すべてを手作りするのがストレスに感じるくらいならやらない方がマシ。お惣菜を買ってきたり、時間がない日は外食OKにしてしまえば気持ちがぐーんとラクになります。心にゆとりができると、逆に「これくらいなら自分で作ろうかな」というマインドにもなりやすいんです。

そこで重要なのが、すぐに作れる簡単なレシピを覚えておくこと。肉、野菜、きのこを入れた炒め物や鍋など、1品作ればOK! というレシピがあると便利。簡単なら「面倒だけど自炊しなきゃ……」という憂鬱な呪縛がなくなりますよ。作りおきも有効です。

また、疲れた体に追い打ちをかける「今日は簡単なものでいいよ」という、家族からの全然やさしくない言葉。いくら簡単なものでも作っていることに変わりはないのに、「今日は手抜き料理だね」なんて非情なひと言をいわれた日には、あまりにも悲しい気分に。「簡単でいいならあなたが作りなさいよ」という言葉を何度飲み込んだことか。

そこで考えた作戦が、ざっくり作ったものは一番いい器で食卓に出すこと。たとえ食材の種類が少なくても、シンプルで上品な料理に見えるという効果があります。「今日は手抜き」だなんて思わせない、手間をかけたように演出することが大切です。

【手間抜きポイント】
自炊のハードルは上げない方が気がラク。心にゆとりをもちましょう。

凝った料理を作ろうとしない

なぜか料理初心者の人ほど、パエリアやロールキャベツといった凝った料理を作りたがります。料理が上手になりたくて、あえて難易度の高いメニューに挑戦しようとしているのかもしれませんが、材料が多くて手間のかかる料理は、初心者がひとりで作ると必ずといっていいほど失敗します。失敗すると料理が嫌いになってしまい、やりたくなくなる……それでは最初のやる気がもったいないですよね。

私は、誰でも簡単に、かつおいしく作れるレシピを日々研究しています。一見ハードルの高そうな料理でも、失敗しやすいポイントを探り、可能な限りその手順を省いていく。初心者でも失敗しないレシピを構築するのが私の使命だと思っています。

これから料理を始めたいと思っている人は、まずはシンプルで簡単なレシピから試してみてください。初心者向けのレシピ本や、料理アプリなどを使い、主材料が3つ以下、調味料が2、3種類以下で作れ、かつ手順もなるべく少ないものを探してみましょう。なかには、食べたことのない食材の組み合わせのレシピもあるかもしれません。しかし、シンプルな組み合わせだとまずくなりようがなく、失敗もしにくいのです。

また、パエリアやロールキャベツに限らず、レシピ名のあるものだけが料理というわけではありません。冷蔵庫の残り野菜を炒めたり、ただレンチンしただけのものだって立派な料理。そういった名もない料理が家庭料理の本流なのです。まずは簡単な料理からスタートし、料理の感覚を徐々に身につけていけば自信がつくはず。そうすれば、凝った料理に挑戦しても失敗が少なくなります。

【手間抜きポイント】
名前もないようなシンプルな料理こそが家庭料理の本流です。

* * *

『料理のその手間、いりません』(柳澤英子 著)
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柳澤英子(やなぎさわ・えいこ)
料理研究家・編集者。2011年、52歳のときに食を楽しむ独自の食事法を始め、1年後には26キロ減の47キロに。その後リバウンドもなく太りにくい体質と健康をキープ。忙しい人でも苦にならずに作れる簡単レシピが好評。『ひとりごはん』『ふたりごはん』(ともに西東社)がロングセラーに。近著に累計260万部超の大ベストセラーとなった『やせるおかず 作りおき』シリーズ(小学館)、『映(ば)える!おいしい!こんにゃく食堂』(小学館)、『柳澤式ラクやせオートミールレシピ』(扶桑社)など。

 

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