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師の息遣いをも伝える、頂相(ちんそう)彫刻に注目! 【円覚寺の至宝 鎌倉禅林の美】展

取材・文/藤田麻希

北鎌倉駅を出てすぐのところにある臨済宗大本山・円覚寺。高低差をいかした伽藍に、国宝の舎利殿や洪鐘、仏殿や方丈などの建物が並び、都心からさほど離れていないにもかかわらず、中世の雰囲気を感じることができます。

円覚寺が創建されたのは鎌倉時代の1282年(弘安5年)。北条時宗が、中国・宋から招いた禅僧・無学祖元によって開山され、以後、鎌倉における禅文化の中心的な役割を果たしてきました。

現在、円覚寺と円覚寺派の寺宝を公開する展覧会が、日本橋にある三井記念美術館で開催されています。ちなみに、日本橋から銀座一帯は、前島と呼ばれ、徳川幕府が開かれる以前は円覚寺の所領だった縁の地でもあります。円覚寺管長の横田南嶺さんは次のように展覧会について説明します。

「見どころといたしましては、十数年ぶりに建長寺開山の大覚禅師・蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)の頂相(ちんそう)彫刻と、円覚寺の無学祖元(むがくそげん)仏光国師の頂相彫刻が、2つ揃って出ることです。禅宗に関連する仏像も素晴らしいのですけど、禅宗には仏法を伝えた人を尊ぶところがございます。当時の禅僧の息遣いが聞こえてきそうな頂相彫刻がたくさん出ております。そのほかにも、はじめて展覧するものもたくさんございますので、見ごたえも十分あるのではないでしょうか」

禅にまつわる展覧会には必ずと言ってよいほど展示される頂相彫刻ですが、よくわからずに見過ごしているかたも多いのではないでしょうか。今回は頂相彫刻についておさらいをしておきましょう。

■頂相彫刻とは

重文「無学祖元坐像」鎌倉時代 円覚寺

重文「無学祖元坐像」鎌倉時代 円覚寺

 

重文「夢窓疎石坐像」南北朝時代 瑞泉寺

重文「夢窓疎石坐像」南北朝時代 瑞泉寺

禅宗では、弟子が師から法を受けついだ証として、師の肖像画=頂相を授けます。そのような高僧の肖像を立体であらわしたものを頂相彫刻と呼びます。禅宗では師僧の人格そのものを尊ぶため、このような肖像美術が発展しました。頂相彫刻は、高僧を祀る祖師堂や開山堂に安置され、雲水(修行僧)たちによって礼拝されました。

たいていの頂相彫刻が、椅子に座り、法具である払子(ほっす)や警策(けいさく)などを持った、お決まりのポーズをとっているため、一見どれも似たように見えてしまいます。ですが、ここで見るのをやめないでください。頂相彫刻の最大の見どころは、顔が像主に似せて個性的にリアルにつくられることです。生前につくられたものや、亡くなってからすぐに作られたものも多く、実際に師を知った人の意見を汲んで、顔の皺や血管、肉付きなどの師の顔の特徴や雰囲気までをも現代に伝えています。ちなみに、生前につくられたものを「寿像」と呼び、没後につくられたものを「遺像」と呼んで区別します。

横田さんの話にも出ていた、建長寺を開山した蘭渓道隆の頂相彫刻は、普段は建長寺内の開山堂に安置されており、間近には拝観できない貴重な像です。今回の展覧会では近づいて拝見できますので、こちらにもご注目ください。

重文「椿梅竹堆朱盆」元時代 円覚寺

重文「椿梅竹堆朱盆」元時代 円覚寺

 

「宝冠釈迦如来坐像」鎌倉時代 白雲庵

「宝冠釈迦如来坐像」鎌倉時代 白雲庵

 

「観音菩薩立像」南北朝時代 円覚寺

「観音菩薩立像」南北朝時代 円覚寺

また、今回の展覧会では、特別講演会、座禅体験プログラム、法話や座談会など、円覚寺主催のさまざまなイベントが開催されます。

「円覚寺の禅は、その教えが脈々と今日まで行なわれていて、これからさきの新しい時代においても、精神のよりどころとして大きな役割を果たしていくはずです。この展覧会を通じて、禅を単なる過去の遺産としてではなく、現代にも息づきそして将来にも生きていくものであることを感じてもらえればと考えております」(横田さん)

座禅や法話の開催日に三井記念美術館に行くと、展覧会限定の特別の朱印をいただくことができるそうです。展覧会の観覧券があれば、無料で体験できるイベントもありますのでぜひお出かけください。

【大用国師二百年・釈宗演老師百年 大遠諱記念特別展 円覚寺の至宝 鎌倉禅林の美】
■会期:2019年4月20日~6月23日
■会場:三井記念美術館
■住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
■電話番号:03-5777-8600
■美術館サイト:http://www.mitsui-museum.jp
■開室時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
■休館日:月曜日

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

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