取材・文/池田充枝
悠久の歴史を有する中国陶磁のなかで、宋時代(960-1279)にはその美しさが頂点に達したとも評されます。
宋時代を代表する陶磁器である「宋磁(そうじ)」は、官窯、景徳鎮窯、定窯などにみられるように、白磁、青磁、黒釉磁などの単色の釉薬をまとった簡素で研ぎ澄まされた造形美が美しく、神秘的ともいえる格調の高い陶磁器です。
一方で磁州窯、吉州窯などの搔き落としや、五彩(宋赤絵)などの色彩に変化を凝らした絵付陶磁も生み出され、活気あふれるユーモラスな意匠も展開しています。
宋時代から長い年月を経た後世の人々もまた、宋磁に畏敬の念を抱き続け、日本でも古くから唐物として知られる作品があり、近代以降には鑑賞陶器としても愛でられてきました。
そんな宋磁の多様な世界を一望できる展覧会《宋磁 神秘のやきもの》が、東京の出光美術館で開かれています(~2018年6月10日まで)。
本展では、重要文化財、重要美術品を含む約110件を展観。宋時代前後のやきものの様相と合わせて紹介します。
本展の見どころを、出光美術館の担当学芸員、徳留大輔さんにうかがいました。
「今回の展覧会は、当館における約40年ぶりの「宋磁」展です。拝借する作品をあわせ、重要文化財6件(うち絵画作品1件)、重要美術品2件を含む約110件を通して、中国陶磁の真髄である宋磁の世界へ皆様を誘います。
見どころは、それぞれの窯(系)の様式を比較しながらお楽しみいただけるコーナーです。官窯を頂点に、定窯、磁州窯、耀州窯などの各地の窯(系)で、独特の様式美が確立した宋磁の多様な世界をご覧いただきます。
ほかにも興味深いテーマをトピック展示として、いくつか紹介します。
たとえば、絵画に描かれた宋磁。宋磁は実物だけでなく、絵画の中にも描かれました。そこにはどのような宋磁が描かれ、なぜ描かれたのか? 思いを馳せていただければと思います。また宋磁と茶碗というテーマも設けています。類例が少なく珍しい釉調が魅力の、龍泉窯の砧青磁で天目形の茶碗や、吉州窯の玳玻天目(たいひてんもく)などを厳選して展示します。
いつの時代の人にとっても魅力的で、神秘的なものであり続ける宋磁。この機会に、ぜひ会場まで足をお運びいただければ幸いです」
神秘的かつ優美。中国陶磁の真髄ともいえる宋磁の名品を、じっくりご堪能ください。
【開催要項】
『宋磁 神秘のやきもの』
会期:2018年4月21日(土)~6月10日(日)会期中、一部展示替えあり
会場:出光美術館
東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
電話:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://idemitsu-museum.or.jp/
開館時間:10時から17時まで、金曜日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(ただし4月30日は開館)
取材・文/池田充枝