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「いまスーパーカーに乗ったらギャグになる?」(テリー伊藤のクルマコラム 第8回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、演出家のテリー伊藤さんが執筆します。

文/テリー伊藤(演出家)

こんにちは、テリー伊藤です!

僕は長い間テレビに携わってきたわけですが、見せ方も番組の企画そのものも、昔とは随分変わりました。今回は、そんな話からクルマについて語ってみたいと思います。

それでもスーパーカーに乗る皆さん! 私は陰ながら応援しています!!

■「相棒」にGT-Rが登場しても話題にならない理由

水谷 豊さん主演のドラマ「相棒」をご覧になっているサライ世代の皆さんは、きっと多いと思います。刑事ドラマですから当然、劇中にクルマが登場する機会も多いわけですが、数年前に水谷さん演じる右京さんの自家用車として登場した、日産・フィガロが話題になりました。1990年代初めに発売された、レトロなデザインのオープンカーです。劇中車は黒く塗ったオリジナル仕様で、洒落た雰囲気が右京さんのイメージにとても合っていたことを覚えています。

ドラマのスポンサーが日産ということもあり、今までにフィガロのほか、ブルーバードシルフィやエクストレイル、フーガなどが登場しましたが、スーパーカーのGT-Rまで登場していたのをご存じですか?

かつて、スカイラインの高性能モデルとして登場したGT-Rは、70年代半ばから80年代終わりまでの休止期間を経て復活、そして現在はスカイラインの名が外れ、日産のフラッグシップの座に君臨しています。新車価格はなんと1000万円越え! 誰もが買えるものじゃないし、そもそも刑事が乗るクルマとしてありえない設定に僕はびっくりしたんですけど、世間じゃあまり話題になりませんでした。

なぜか? それはきっと、みんなクルマを現実的にとらえるようになったからではでしょうか?そもそも、刑事ドラマ自体、石原プロ製作の「大都会」「西部警察」から「相棒」へとリアル志向になっていますしね。「西部警察」では日産のもうひとつのスポーツカー、フェアレディZが出ていましたが、これがスゴイ改造車で。ドアが鳥の羽のように開くガルウィングで、ボディカラーは黒と金色の2トーン! 渡 哲也さんがハンドルを握り、威勢よくショットガンをぶっ放していたのが印象的でしたね~。ドラマを見た当時の若者たちはそうしてスポーツカーに憧れを抱き、「いつかは俺も乗ってやろう」と思ったはずです。

■スーパーカーより安くてかわいいクルマ

今、「西部警察」みたいな刑事ドラマが企画されたら、劇中車はランボルギーニあたりがふさわしいでしょう。でもそんなことをしても視聴者には支持されません、きっと。

インターネット上で「現実的じゃない」とか「容疑者を乗せる後席がない」とか書かれちゃいますから。それでも夢があると思えればいいんですが、実はドバイではランボルギーニのパトカーがあるわけで…… 現実がドラマを超えちゃってるんです。だから「相棒」にGT-Rが出たところで、視聴者はわくわくすることもなく、むしろフィガロみたいなかわいいクルマのほうに目がいくんでしょうね。

大体、GT-Rですら高いのに、ランボルギーニとかフェラーリなんて4000万円ですよ。どうしても手に入れたくて、身を削る思いで働いて手に入れたのであれば話しは違うけれども、仮想通貨でウン億円儲けてスーパーカーを買っても、そこには夢がないんです。買うまでのドラマがなければ、それは、もはやギャグにしかならない。それが今の時代の空気なんですよね。だから、サライ世代の皆さんには安くてかわいいクルマをおすすめするんです。少し古い時代のものなら、顔つきもイカつくないし、自分色に染める楽しみもあります。次回は、より手頃で楽しいニッポンの「ちょいフル中古車」について語ってみたいと思います。お楽しみに!

【今週のテリー・カー:日産・フィガロ】

クルマ作りに予算を確保できて、企画の自由も効いたバブル景気時代。日産は高性能一辺倒とは一線を画す、レトロで親しみのある「パイクカー」シリーズの開発に着手し、販売した。フィガロはその第三弾(最終)で、1991~92年に限定2万台で販売。その愛らしい姿は、今も多くのファンに支持されている。

文/テリー伊藤(てりー・いとう) 
昭和24年、東京生まれ。演出家。数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在は多忙な仕事の合間に、慶應義塾大学 大学院で人間心理を学んでいる。

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