人類の歴史は戦争の歴史と言っても過言ではないでしょう。古今東西、戦争は途絶えることなく続いてきました。そして今もなお、世界では凄惨な戦争が続いています。共通するのは、権力者による強硬な姿勢の陰で、子どもたちを含む多くの民衆が犠牲になっていることです。

長崎県美術館で開催の「ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた」展は、こうした現状を受けて、原爆のみならず戦争がもたらした惨禍に焦点をあてています。(7月19日~9月7日)

北川民次《焼跡》 1945年 油彩・カンヴァス 名古屋市美術館蔵

本展の見どころを、長崎県美術館の学芸員、森園敦さんにうかがいました。

「被爆地・長崎にある長崎県美術館は、このたび被爆80年という節目の年に合わせ、戦争と原爆をテーマとした展覧会を開催します。

本展ではスペインの巨匠フランシスコ・デ・ゴヤの版画集〈戦争の惨禍〉を軸に据えることにしました。ゴヤはこの版画集において、特定の事件や人物を描くことよりもむしろ、戦争を通じて露わとなる人間の暴力性、残忍性、絶望や狂気など、誰しもが持つ闇の部分に光を当て、普遍的な人間のすがたを顕現させました。

フランシスコ・デ・ゴヤ<戦争の惨禍>《15番 もう助かる道はない》 1810-14年(1863年初版)
長崎県美術館蔵

本展では〈戦争の惨禍〉から抽出した7つのテーマに合致する国内外の芸術家たちによる作品をピックアップして、テーマ別に章を設けています。約180点で構成された本展の中でも、特にスペインの美術館であるプラド美術館、ソフィア王妃芸術センターからの借用作品は必見です。

フランシスコ・デ・ゴヤ《死した七面鳥》 1808-12年 油彩・カンヴァス
プラド美術館蔵 (C)Photographic Archive.Museo Nacional del Prado.Madrid
ジュリ・ゴンサレス「《ムンサラット》の頭部素描No.2」
 1939-41年頃
グラファイト・紙 ソフィア王妃芸術センター蔵
Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia

さらに会期中には、大塚オーミ陶業株式会社、及び大塚国際美術館の協力を得て、美術館のエントランスにパブロ・ピカソ《ゲルニカ》の原寸大複製陶板が展示されます。これからの未来を担う若者たちにこそ見ていただきたい展覧会です」

青木野枝《原形質/長崎》 2025年 鉄、ガラス、銅線 作家蔵

現代アーティストによる記憶の風化に警鐘を鳴らす作品も展示されます。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
ゴヤからピカソ、そして長崎へ 芸術家が見た戦争のすがた
会期:2025年7月19日(土)~9月7日(日)
会場:長崎県美術館 企画展示室、常設展示室第1室
住所:長崎県長崎市出島町2-1
電話:095・833・2110
公式サイト:https://www.nagasaki-museum.jp
開館時間:10時~20時(最終入場は19時30分まで)
休館日:7月28日(月)、8月25日(月)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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