ポール・セザンヌ(1839-1906)は、南仏エクス=アン=プロヴァンスの裕福な銀行家の息子として、資産家家庭に育ちました。ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)は、フランス中西部リモージュの仕立て人とお針子の家庭に生まれ、13歳で陶器絵付職人の見習いとなりました。
生まれも育ちも違いますが、同時代に生まれたセザンヌとルノワールはのちに印象派・ポスト印象派の巨匠として並び称せられるようになります。

(C) GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

(C)GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
三菱一号館美術館で開催の「オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」は、2人の出会いと交流や、巨匠と並び称せられるようになった過程を紹介する展覧会です。(5月29日~9月7日)
本展の見どころを、三菱一号館美術館の学芸員、岩瀬 慧さんにうかがいました。
「ルノワールとセザンヌは、お互いの拠点を行き来しており、意外にも交流は多くありました。そんな2人を、20世紀の初めにピカソらの芸術家や当時の批評家は、新しい芸術の道標(みちしるべ)として高く評価していたのです。
20世紀の頭に抽象化する傾向にあった前衛美術の流れの中で、ルノワールの描く裸婦像は古典的なモティーフを魅力的に描く作品として評価されたのです。《風景の中の裸婦》では、人物は少し硬めに表現される一方で、背景の自然は印象派の技法が用いられていて、ルノワールらしいバランスの取れた1点になっています。

(C)GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
一方のセザンヌは、《3人の浴女》のような水浴図で、古代からルネサンスの古典彫刻や、古典絵画に登場する人物の複雑なポーズをひそかに拝借しつつも、曲線美や理想化を避けて独自の表現に邁進しています。セザンヌの描く単純化や抽象化といった要素は、20世紀の芸術家に多大な影響を与えています」

(C)GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
あなたはルノワール派、それともセザンヌ派。好みは分かれるところですが、2人の芸術家に特化して、それぞれの魅力を追求するまたとない企画です。ぜひ会場で2人の世界をご堪能ください。

( C )GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
【開催要項】
オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠
会期:2025年5月29日(木)~9月7日(日)
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/
開館時間:10時~18時、祝日を除く金曜日・第2水曜日・8月の土曜日、9月1日~7日は~20時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合、トークフリーデー(6月30日、7月28日、8月25日)及び9月1日は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝
