20世紀絵画の巨匠、デ・キリコは、イタリア人の両親のもと、ギリシャで生まれました。ミュンヘン滞在時代にニーチェの哲学やベックリンの作品に影響を受け、「形而上絵画」と名付けた作品を生み出します。
その作品群は、詩人のアポリネールやシュルリアリストたちに衝撃を与えた反面、後年には、過去作の再制作や引用の手法が非難を浴びました。
しかし、世間の評判に左右されることなく生涯自分の創作姿勢を貫きました。
東京都美術館の「デ・キリコ展」はデ・キリコの日本で10年ぶりに開催される大回顧展です。(4月27日~8月29日)
本展の見どころを、東京都美術館学芸員の髙城靖之さんにうかがいました。
「20世紀を代表する画家ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。彼が1910年ごろから描いた形而上絵画は、具象的でありながらも、不自然な空間表現や、モティーフの脈絡のない配置などにより、日常の奥に潜む謎や神秘の存在をほのめかします。
彼の作品は、同時代や後代の画家たちに大きな影響を与えました。本展は、20世紀絵画に衝撃を与えたデ・キリコの90年に及ぶ生涯をたどる回顧展となります。
注目はやはり1910年代に描いた形而上絵画です。マヌカン(マネキン)を描いた《予言者》や《形而上的なミューズたち》もこの時代の作品。マヌカンは、西洋絵画で最も重要であった人物像をモノとして扱うことを可能にしただけでなく、理性のない、あるいは無力な人間の象徴でもあります。
本展では絵画以外にも、彼が手掛けた彫刻、挿絵、舞台美術も展示されます。デ・キリコ芸術の全体像に迫り、その魅力を堪能できるまたとない機会です。ぜひ会場でお楽しみください」
90歳で没するまで一貫して自分流を貫いた孤高の画家、デ・キリコの足跡を辿る展覧会です。会場でじっくりご鑑賞ください。
【開催要項】
デ・キリコ展
会期:2024年4月27日(土)~8月29日(木)
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://dechirico.exhibit.jp/
開室時間:9時30分~17時30分、金曜日は~20時(入室は各閉室30分前まで)
休室日:月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月8日、8月12日は開室)、5月7日(火)、7月9日(火)~16日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
※土・日・祝日及び8月20日以降は日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)
取材・文/池田充枝