1年のおりおりの行事や風俗、風物、自然現象を記した歳事記。現代の日本人も毎年決まった時期に行われるさまざまなイベントを通して生活のリズムを感じ取っています。
江戸時代の人々も同様に、1年の平穏無事や子どもの成長などを願ってそれぞれの行事を執り行ってきました。江戸の年中行事を、北斎一門の作品を通して紹介する展覧会が開かれています。(8月30日まで)
本展は、寺社の祭礼や年中行事の風習を、葛飾北斎とその門人たちが描いた約120点の作品で紹介します。
本展の見どころを、すみだ北斎美術館の学芸員、竹村誠さんにうかがいました。
「おすすめしたい作品はたくさんあるのですが、今回は後期展示の作品から2点を取り上げてご紹介します。
北斎の弟子、蹄斎北馬がそれぞれの月を代表する物売を描いた作品です。上から正月の宝船売、2月の初午の絵馬売、3月の上巳(じょうし・雛祭り)のための白酒売、4月の鰹売、5月の端午の菖蒲売、6月の冷水売、7月の七夕の短冊売、8月の仲秋の名月に供える蛤(はまぐり)売、9月の芝神明の祭礼で売られる生姜(しょうが)売、10月の日蓮宗の御会式(おえしき)で飾る造花売、11月の酉の市の熊手と芋頭(いもがしら)売、12月の新年に飾る松売です。本作品は江戸の歳事記そのものともいえるような作品です。
北斎が数え87歳の時に制作された朱描きの鍾馗図は、流行病の疱瘡除(ほうそうよけ)の祈りを込めたものです。朱だけではなく、目や口、髪などに墨が用いられており、細やかな工夫がされています。5月5日の端午には、男子のいる家では強い者の象徴である鍾馗や家紋を描いた幟や鯉幟が屋外にたてられました。他にも、前日の4日からは各家で軒先に菖蒲を挿します。菖蒲は、武を重んじる意味の「尚武」につながるので、男子の節句の縁起物とされています。
北斎や弟子の作品から、150年以上前の江戸の1年を身近に感じて、私たちの先人の生活に思いをはせていただければ幸いです。どうぞ、江戸の歳事記をお楽しみください」
北斎一門が描いた季節感あふれる歳事記、江戸の四季の情趣をご堪能下さい!!
【開催要項】
大江戸歳事記―北斎と楽しむ四季のイベント―
2020年6月30日(火)~8月30日(日)※前後期で一部展示替えあり
前期6月30日(火)~8月2日(日)後期8月4日(火)~8月30日(日)
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
電話番号:03・6658・8936
https://hokusai-museum.jp/saijiki/
開館時間:9時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
休館日:月曜日(ただし8月10日は開館)、8月11日(火)
料金:HP参照
アクセス:HP参照
※会期等変更になる場合もありますので、最新の情報はHPにてご確認ください。
取材・文/池田充枝