昨今、グルメ番組やグルメ雑誌など食文化の情報は活況を呈していますが、「食」の楽しみ方は今も昔も変わりません。太平の世となった江戸時代、庶民も「食」を謳歌しました。
江戸っ子が楽しんだ、四季折々の行事の際の料理や行楽弁当、料亭から屋台や魚河岸まで、 江戸時代の食文化を浮世絵でひもとく展覧会が開かれています。(9月13日まで)
本展の見どころを、本展企画協力者のキュレーターでアートライターの林綾野さんにうかがいました。
「絵を見るのって面白そう。そんな気持ちを抱きながら絵画鑑賞にある種の敷居の高さを感じている人もいらっしゃるかもしれません。本展は江戸の食カルチャーを切り口に、浮世絵をぐっと楽しもうという企画です。
豊国による『見立源氏はなの宴』には、満開の桜を背景に、美しい男女が酒宴を楽しむ様子が描かれています。手前に並ぶ料理を見ていくと、海老や小はだなど握り寿司の姿が。当時それまで普及していた押し寿司を飛び越えて、江戸では握り寿司が大流行していました。豊国は、華やかな酒宴の場面にさらに旬の香りを添えようと、人々の愛する寿司を描いたのでしょう。
武者絵を得意とする歌川国芳による『春の虹蜺』には、さあこれから食べようという女性が、空に現れた虹に一瞬心を奪われる、そんな様子が描かれています。鰻は古くから日本で食されてきましたが、江戸時代、醤油や味醂といった調味料が普及したことで今につながる甘じょっぱい味わいが生まれ、たちまち人気を呼びます。この女性が前のめりに口をあけているのも頷けます。
そんな江戸の食事情をちょっぴりひもときながら、浮世絵をつぶさに見ていくと、描かれた人物が嬉しそうだったり、楽しそうだったり、表情豊かに見えてきます。絵の楽しみ方はいろいろですが、今回は食いしん坊な探求心とともに浮世絵をたのしんでみてはいかがでしょうか」
おいしそう!! 楽しそう!! 江戸っ子たちの旺盛なエネルギーを会場で感じてください。
【開催要項】
おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~
会期:2020年7月15日(水)~9月13日(日)※会期中展示替えあり
1期:7月15日(火)~7月30日(木) 2期:7月31日(金)~8月13日(木)
3期:8月15日(土)~8月28日(金) 4期:8月29日(土)~9月13日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
公式HP:https://oishii-ukiyoe.jp/
開館時間10時から20時まで、7月21日(火)・28日(火)・30日(木)・8月28日(金は17時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:8月14日(金)
料金:公式HP参照
アクセス:公式HP参照
取材・文/池田充枝