取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することで歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。
事故によりフィアット『バルケッタ』を失った力石友之(53歳)さん。新たにアルファロメオ『スパイダーTS』を購入するのですが、車重の重さとボディ剛性の低さに不満を覚え、程なくして売却します。
とことん軽いクルマを求め、ミニ・クーパーに行き着く
次のクルマは可能な限り軽いクルマにしたいと考え、色々と調べた末、当時はローバー社が発売していた『ミニ・クーパー1.3』、通称“キャブ・クーパー”に行き着き、購入します。
「このクーパーは(燃料の供給装置が)キャブレターで、今ではとんでもない高値で取引されていますが、当時はとても安価に購入できたんです。消耗品のパーツ代も国産車と変わりませんし、構造もシンプルだから交換も簡単。なんでも自分でできるクルマでした。700キロを切る軽さのおかげで、街中やミニサーキットでの走行は想像以上に楽しかったのですが、高速道路を利用しての長距離移動は、音や振動からくる疲れに耐える覚悟が必要でしたね」
スタイルに、運転の楽しさに、ミニ・クーパーとの日々を楽しむ友之さんでしたが、購入から5年が経ち、ラジエターをはじめとした水回りにトラブルが発生。あちこちの消耗品も交換すべき時期に差しかかっていました。
「ミニ・クーパーの軽快さも楽しかったのですが、そろそろ身体をいたわる快適さも欲しくなり、手放すことに決めました。色々と考えてアルファロメオの『147』と、BMWの2代目『M3』(E36型M3)に絞り込んだのですが、当時、アルファロメオは発売直後とあって中古車でも値段が高かったため、手の届くM3に決めました」
ミニ・クーパーと比べて車重は大きく増しましたが、速さとボディ剛性の高さ、ブレーキの屈強さがこれを補い、不満を感じさせませんでした。かつて愛車としていたBMW『320i』と比べて、より精錬されたシルキー6の生み出す気持ちよさと快適性は、友之さんをとりこにします。
このM3は事故を起こして廃車になってしまうのですが、「これ以上、快適で魅力的なクルマは無い」と、再びM3を購入します。
この頃、街中で黄色いナンバーを付けたスクーターを見かけた友之さんは、「自分はあのスクーターに乗れないんだ」と感じ、大型自動二輪免許の取得を決意します。
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