写真・文/山本益博
てんぷらは、東京湾の波の静かな海に棲息している、きす、めごち、はぜなど尻尾まで食べられる小魚、そしてくるまえび、あなごなどを揚げた料理です。これを「江戸前」のてんぷらと言います。さわら、たい、ふぐなど骨の硬い魚は揚げません。
その代表が「しらうお」。春を告げる小魚で、昔は佃島で豊富に取れました。今は、島根県宍道湖から入ってきます。年々温暖化で、1月の末には登場するようになりました。その後、だんだん北上し、宮城の子持ちの松島産が最上品と呼ばれています。一尾一尾揚げられた「しらうお」は、小魚にも関わらず、実にコクのある味わいです。
「しらうお」が終わる4月上旬ころから、「きす」がとても美味しくなります。上手に揚げられた「きす」は、尻尾まで美味しく食べられます。
山菜の「蕗の薹」も、雪の中から顔を出し、揚げられると、苦みが多少中和され、口の中に春が訪れます。