写真・文/山本益博
初夏のてんぷらと言えば、「稚鮎」をまず挙げなくてはなりません。小ぶりですが、わずかな苦みが心地よいてん種で、天つゆでもなく、塩でもなく、蓼酢につけて味わうと「稚鮎」の持ち味が最も発揮されます。そして、ここでビールをいただきます。「とりあえず」で、食事の初めにいただくのではなく、「稚鮎」を揚げ始めたら、ビールを注文し、しっかりと泡を立ててビールを注ぎ、「稚鮎」の苦みを感じたら、泡立ちの良いビールを流し込みます。これが、抜群の相性です。
この季節のてん種で忘れてはならないのが「ぎんぽう」。ぎんぽう漁というのはなく、あなごの漁の際に、一緒に獲れる魚で、形と言えば「うつぼ」の寸詰まりとでもいえばよいでしょうか。身がしっかりとしていて、味わいは「海の味」とでもいえばよいでしょうか。「ぎんぽう」を食べることができた方は、「超」がつくほどのラッキーと言えます。
野菜では「アスパラガス」です。1年中ありますが、やはり、初夏にふさわしいてん種です。
この「アスパラガス」、「みかわ」では1本を二つに切り、穂先側と根本側とに分け、別々に揚げます。まず、根本側、つまりアスパラガスの下半身を鍋に入れ、そのあと、穂先側を入れ、しばらくしてから、穂先側から引き揚げ、そのあと、根本側も引き上げます。
すると、短時間で揚げられた穂先側は瑞々しいアスパラガスの香り、長時間油の中にいた下半身の根本はジューシーで甘みがたっぷり、1本のアスパラガスから二つの味が楽しめるてんぷらになっています。