写真・文/山本益博
「江戸前」の握り鮨で、最も歴史あるすし種といえば「こはだ」です。文化・文政年間に江戸の握り鮨が生まれたと言われていますが、文政年間に華屋與兵衛がこはだを酢締めすることを考案し、これを握り鮨にして売り歩いたところ、たちまちのうちに人気となり、数年後、両国に店を開くに至りました。
こはだは、煮ても焼いても生で食べても美味しくないのに、塩と酢で酢締めにすると、酢めしと滅法相性がいい。言ってみれば、鮨のために生まれてきた魚とも言えます。華屋與兵衛が見つけた、関西の鯖すしに匹敵する小ぶりなひかりもの、それがこはだでした。
ということは、文政元年が1818年ですから、今年2018年は「こはだイヤー200年祭」です。すし業界の方々、すし職人の方々、200年を記念して「こはだ塚」を建立してもいいのではないでしょうか。
江戸っ子、東京っ子は、大振り、大袈裟、大仰が苦手で、小紋、小鍋など、なんでもミニチュア嗜好。ですから、江戸の美意識は「粋」ではなく「小粋」なんですね。