文・写真/馬場吉成
「煎酒」という調味料をご存知でしょうか? 最近話題になっているので、見た事がある、実際に使った事があるという方もいるかと思います。
じつは、今でこそ手軽に買えてどの家庭にもある醤油は、江戸時代の中ごろまでは、なかなか庶民の手には届かない高価なものでした。その代りとして、酒と鰹節と梅干しから作る「煎酒」が広く使われていたのです。
煎酒の歴史は古く、室町時代の末期には既に作られていたようです。室町時代の「鈴鹿家記」という書物の中には「鯉の指身(さしみ)に山葵の煎酒」という記述が出てきます。
煎酒の味は、鰹節の旨みをギュッと濃縮して、それに梅干しの旨みと酸味、程よい塩気を加えた上品な味わいです。醤油と比べると旨味が強く、サッパリとしています。
白身魚の刺身につけてよし、そのままを豆腐やサラダにかけて食べてよし。炒め物や煮物にも使えます。煎酒に少し七味を加え、それを餃子につけて食べるというのもオススメです。
このように、かつて醤油の代用品だった「煎酒」は、今でも幅広く使える万能調味料なのです。
煎酒の作り方に関しては、江戸時代の料理書『料理物語』に、
「煎酒は鰹一升に梅十五入り。古酒二升水ちとたまり少々入。一升に煎じこしさましてよし」
……と書かれています。つまり、日本酒に梅干しや鰹節を入れてゆっくり煮立て、塩や醤油などで味を調整したら冷まして漉せば完成です。
実際に煎り酒を作る場合の分量としては、日本酒4合に対し梅干し4個、鰹節15g、塩か醤油を小サジ0.5~1程度で作れます。
鍋に日本酒を入れて沸騰したら梅干しと鰹節を入れて火を弱め、半分程度の量になるまで煮詰めます。最後に味を見ながら塩か醤油を加え、布巾などで濾してから冷ませば出来上がり。
梅干しは、できれば自家製で作るような、梅と塩と赤シソのみから作った梅干しがいいです。煎酒作りに使った梅干しと鰹節は、他の料理にも使えるので捨てずに取っておきましょう。
では煎酒を使った酒がすすむ醸し料理「白身魚の煎酒黒酢カルパッチョ」を紹介します。用意するのは以下の材料です。
・刺身用の白身魚 約100g(今回は鯛を使用)
・プチトマト 3個
・青シソ 2枚
・ミョウガ 1本
・小ネギ 少々
・煎り酒 大さじ1.5
・オリーブオイル 大さじ1.5
・黒酢 大さじ1
・塩 少々
・黒胡椒 少々
まず、オリーブオイル、煎酒、黒酢をボールに入れてよく混ぜておきます。
切り分けた白身魚を皿に並べ、刻んだ青シソとミョウガを散らし、周りに切ったプチトマトを添えます。続いて、塩と黒胡椒を全体にかかるようにふりかけます。
混ぜ合わせた煎酒を全体にかけて、小ねぎを散らせば完成です。
鯛の甘味とコクのある煎酒の旨味が、黒酢の酸味と黒胡椒の辛味で爽やかに引き締められます。鰹の風味が効いた和風カルパッチョです。
この白身魚の煎酒黒酢カルパッチョに合わせたのは、青森県十和田市の鳩正宗酒造の『鳩正宗 特別純米酒 夏純』です。スッキリとした柑橘類を思わせる甘味や、酸味を感じる夏日本酒が、煎酒の旨味や黒酢の酸味に合います。
ぜひご家庭でもお試しください!
文・写真/馬場吉成
webライター。日本酒、料理、マラソン、