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さくら製作所の「氷温M2」LX63DM2Z-B。ワインと日本酒をそれぞれの温度帯で保管可能。合計63本収納。23万8000円(税込)。問い合わせ/Sakura Works Tel.03-6431-8611(平日10-17時)
https://sakura-wks.com/product/detail/lx63dm2z-b/

良質な日本酒を手に入れたとき、その美味しさを最大限に引き出すために重要なのは適切な保管方法です。逆に劣化の原因となるのは光と温度、そして空気(酸素)への曝露。振動も、保管環境次第で影響がみられます。一般的な冷蔵庫での保管も可能ですが、より理想的な環境を求めるなら日本酒セラーの導入を検討してみませんか? 今回は、知っておきたいセラー選びのポイントから、最適な保管温度まで詳しくご紹介します。

文/山内祐治

目次
小型の日本酒セラーで手軽に始める本格保存
日本酒セラーは縦置きが基本である理由
なぜマイナス5℃の日本酒セラーが注目されるのか
ワインセラーで日本酒を保管する際の適切な温度設定
業務用日本酒セラーの圧倒的な性能と活用法
まとめ

小型の日本酒セラーで手軽に始める本格保存

日本酒セラーを導入したいと思っても、設置場所の確保が最大の課題となることが多いでしょう。そんな方におすすめなのが小型の日本酒セラーです。

現在市場には、四合瓶を6本程度から20本程度まで収納できる、小型冷蔵庫サイズのセラーが数多く販売されています。これらの小型セラーは省スペース設計で、一人暮らしのお部屋でも設置可能。限られた空間を有効活用できます。

最初の1台として導入し、特にお気に入りの日本酒や期間限定品、特別なお酒などを厳選して保存するという使い方も賢明です。最近では、デザイン性に優れたスタイリッシュなモデルも登場しており、インテリアとしても楽しめるのが魅力的。来客時には「日本酒好き」をさりげなくアピールすることもできるでしょう。

小型セラーを選ぶ際に注意したいのが静音性です。コンプレッサー型とペルチェ型の2種類があり、静音を優先するならペルチェ、低温安定性やマイナス5℃から0℃帯の運用はコンプレッサーが有利、というトレードオフです。

寝室や書斎など静かな環境での使用を考えている方は、この点も考慮して選択することをおすすめします。

日本酒セラーは縦置きが基本である理由

ワインセラーを見慣れている方は、ボトルを横に倒した状態で保管されている光景を思い浮かべるかもしれませんが、日本酒の瓶は縦置きが基本です。この違いには、日本酒特有の保管理論があります。

最も重要な理由は酸化スペースの最小化です。日本酒のボトルを縦に立てて保管することで、酒液と空気の接触面積を最小限に抑えることができます。横に寝かせてしまうと接触面積が大幅に増加し、品質劣化の原因となる酸化が進行しやすくなってしまいます。

また、香気成分の保持という観点からも縦置きは有効です。日本酒の魅力的な香りは非常にデリケートで、酸化によって変化することがあります。縦置き保存により、これらの繊細な香気成分を長期間封じ込めておくことが可能になります。

さらに、澱(おり)の沈殿を適切に管理できるのも縦置きの利点です。日本酒に含まれる微細な沈殿物は、縦置き保管により底部に自然に沈殿し、澄んだ上澄みだけを楽しんだりといったことも可能です。

ワインの場合はコルクの乾燥防止のために横置きや斜め置きが推奨されますが、日本酒の栓は異なる構造のため、乾燥への配慮は少なくて良いでしょう。むしろ酸化防止を最優先に考えた縦置き保管と栓の衛生的な運用こそが、日本酒本来の味わいを守る最適な方法と言えるでしょう。

なぜマイナス5℃の日本酒セラーが注目されるのか

日本酒セラーの温度設定について、近年特に注目されているのがマイナス温度帯での保管です。この温度設定には、日本酒の香気成分に関する見解が存在します。

日本酒の二大香気成分として知られるカプロン酸エチルと酢酸イソアミル。前者はリンゴのような爽やかな香り、後者はバナナやメロンのような甘い香りを生み出します。この酢酸イソアミル、カプロン酸エチルともに最近では-5℃から0℃が適するとされることが多く、この温度帯であれば変化が遅くなります。あまりにアルコールが低くて凍結を気にするアイテム以外は、様々な酒蔵でこの温度帯での保管がなされています。

この保存温度の特性を踏まえ、フルーティーな香りを最大限に保持するのであれば、自宅でもマイナス温度帯での保管が理想的とされています。現在、さくら製作所の「氷温M5」シリーズなど、マイナス5℃まで設定可能なセラーが登場し、愛好家の間で話題となっています。

生酒のようなフレッシュさが重要な要素という位置付けの日本酒については、この温度帯で保管することにより、香気成分や品質の変化を大幅に抑制し、より長期間にわたってフレッシュな状態を維持することができます。

さらに興味深いのは「氷温熟成」という概念です。マイナス5℃程度の低温環境で2年から5年程度熟成させることで、フルーティーな香気成分を保持しながら、テクスチャーをより滑らかに変化させていくことができます。できたてのフレッシュな味わいとは異なる、低温熟成特有の複雑でありながら滑らかさのある味わいを楽しむことができる、まさに日本酒愛好家ならではの楽しみ方といえるでしょう。

ワインセラーで日本酒を保管する際の適切な温度設定

既にワインセラーをお持ちの方が日本酒保管に活用する場合、温度設定には特別な注意が必要です。加えて、保管温度と飲用温度は別の概念としてご理解ください。

保管の観点では、前述したようにフルーティーな香りを重視する日本酒は、マイナス5℃からプラスマイナス0℃程度の低温環境が理想的です。しかし、この温度で直接飲用すると、人の舌や鼻では香気成分や甘さ、フレッシュさを十分に感じづらくなります。飲用時には、お酒の特性に応じた適切な温度まで上げる必要があります。

ただし、すべての日本酒が低温保管に適しているわけではありません。お酒の性質によっては、意図的に常温や赤ワインセラー程度の温度で熟成させることで、味わいに複雑さや旨味が増すものもあります。

保管温度を決める際の一つの目安として、購入した専門酒販店での保管状況を参考にすることをおすすめします。常温の売り場で陳列されていた日本酒は、直射日光の当たらない常温環境での保管も可能なものが多くあります。一方、冷蔵ケースに入っていた日本酒は、基本的に冷蔵保存を継続することが安全です。

上級者向けの楽しみ方として、あえて常温熟成にチャレンジするという方法もあります。これは若干マニアックな領域で自己責任となりますが、日本酒の持つ可能性を探求する一つの手法として、知識と経験を積んだ愛好家の間では実践されることがあります。

業務用日本酒セラーの圧倒的な性能と活用法

飲食店や酒販店などの業務用途では、家庭用とは比較にならない大容量と耐久性を備えたセラーが必要になります。業務用日本酒セラーは、まさに「部屋レベル」の収納力を誇る本格的な設備です。

業務用セラーは大きく2つのタイプに分類されます。一つは冷蔵庫型の密閉式、もう一つはショーケース型のリーチイン式です。どちらも一升瓶を含めて大量に収納可能で、圧倒的な収納力を実現しています。

業務用途では、耐久性の高さも重要なファクターとなります。具体的には、頻繁な開閉にも耐える頑丈な構造と、奥のボトルまで均一に冷却できる強力な冷却システムが挙げられます。ホシザキなどの有名メーカーが手がける製品は、プロの現場で求められる厳しい条件をクリアしています。

実際に、島根の王祿酒造のように「マイナス5℃のセラーがない業者には卸さない」とされているような品質重視の酒蔵も存在します。これは、せっかくの高品質な日本酒を最高の状態で消費者に届けたいという、造り手の強いこだわりの表れと言えるでしょう。

興味深いのは、一般愛好家が業務用機器を活用するケースが増加していることです。レマコム社の三温度帯冷凍ストッカーなど、マイナス20℃から8℃まで温度調整可能な製品を日本酒セラーとして転用する例もあります。スペースに余裕がある方や、本格的な保存環境を求める方には、こうした選択肢も検討する価値があるでしょう。

レマコム製三温度帯冷凍ストッカー「RRS-100NF」。幅554mm×奥行き578mm×高さ866mmと中型冷蔵庫並みの大きさだが、日本酒を低温保管するには便利。アマゾンで3万円代で入手できる。

まとめ

日本酒は醸造酒であるため、ウイスキーなどの蒸留酒よりも、さらに低い温度帯での保管が推奨されるアイテムが存在します。日本酒を最高の状態で楽しむためには、それぞれ適切な環境整備が不可欠です。

日本酒セラーの導入は、単なる保管手段を超えた価値を提供することでしょう。冷蔵庫のスペースを潰さないことによって家族に喜ばれることもあるでしょうし、何より日本酒の持つ本来の魅力を最大限に引き出すことができます。

小型セラーでの手軽なスタートから、マイナス5℃での本格保存、さらには氷温熟成への挑戦まで、セラーがあることで日本酒ライフの可能性は大きく広がります。それぞれのライフスタイルと予算に応じて最適なセラーを選択し、日本酒の奥深い世界をより一層お楽しみください。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

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