文・写真/佐竹敦
共に国宝に指定されている塔とお堂を一望することができるという、最高級の贅沢を味わうことができる寺院が、日本には7箇所あります。以下、順に紹介いたしましょう。
■1:法隆寺五重塔&金堂(奈良県)
法隆寺は聖徳太子が建立した世界最古の木造建築物として世界遺産に指定されていることでもあまりにも有名な寺院です。
五重塔は醍醐寺、瑠璃光寺の五重塔と共に日本三名塔の一つとされています。境内は観るものを遠く飛鳥の昔へといざなってくれるかのような幽玄な雰囲気があり、1300年以上に渡る悠久の歴史を感じずにはいられません。
■2:室生寺五重塔&灌頂堂(本堂)(奈良県)
室生寺は『女人高野』として名高い山岳寺院です。灌頂堂(本堂)の脇を抜けると奥ノ院へと続く登り階段があり、五重塔はその階段を登り切った場所に建っています。
この階段から見上げる塔の姿は室生寺の代名詞ともなっていて、五重塔自身が光を解き放っているかのように神々しい景観です。
■3:明通寺三重塔&本堂(福井県)
明通寺は大同元(806)年に坂上田村麻呂によって創建されたと伝えられる寺院で本堂と三重塔は福井県で唯一の国宝建造物です。
塔は本堂の後ろの小高い丘に建っていて、本堂と塔を一望する景観は質実剛健で見るものを圧倒する重厚感があります。
■4:西明寺(池寺)三重塔&本堂(滋賀県)
西明寺は百済寺、金剛輪寺とともに湖東三山と称される古刹です。紅葉の名所としても有名で境内の西側に大池があることから池寺とも呼ばれています。
本堂と塔を一望する景観は大変秀逸で洗練された大変優美な景観となっています。
■5:常楽寺三重塔&本堂(滋賀県)
常楽寺は善水寺、長寿寺とともに湖南三山と称される古刹です。
紅葉の名所としても有名で境内に入ってすぐに目に飛び込んでくる本堂とその後ろに隠れるように建っている三重塔の佇まいは一瞬で心を奪われしばらく魅入ってしまうかのような景観です。
■6:明王院五重塔&本堂(広島県)
明王院は大同2(807)年に弘法大師によって創建されたと伝えられる寺院です。
折衷様式の建物としては日本最古級とされる本堂と日本で五番目に古いとされる五重塔は、共に朱色の塗装が施されていて、並び立つ姿は抜群の存在感があります。
■7:興福寺五重塔&東金堂(奈良県)
古都・奈良を代表する寺院の一つである興福寺。境内にそびえる五重塔は奈良公園のどこからでも望むことができ、古くから奈良のシンボルとして親しまれています。
五重塔は高さ50.10mで東寺 (教王護国寺)の五重塔に次ぐ大きな塔で、東金堂と五重塔が並び立つ姿は有無を言わさぬ圧倒的な迫力があります。
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以上、国宝の塔とお堂が並び立っている貴重なお寺を7箇所ご紹介しました。明王院を除いて、近畿一円に集中しています。寺院建築における至高のペアを求めて寺を巡るというのも、旅のテーマとして面白いのではないでしょうか。
文/佐竹敦
日本全国の即身仏・一之宮・五重塔・三重塔・滝百選・棚田百選・国分寺跡をすべて訪ね歩いた一人旅の達人。テレビチャンピオン滝通選手権出場。主な著書に「この滝がすごい!」「日本の滝めぐり」等。テレビ東京の「厳選!いい宿ナビ」のコラム執筆、@nifty温泉の記事執筆等、ライターとしても各メディアで活躍中。ホームページ「歴史と旅」http://www5f.biglobe.ne.jp/~