身に覚えのない妻の妊娠
ライターI(以下I):『光る君へ』第27回のトピックスは石山寺で一夜をともにしたまひろ(演・吉高由里子)と藤原道長(演・柄本佑)の「恋ふたたび」の場面ではないでしょうか。本来であれば、7月7日の七夕の夜に放送されるようなシチュエーション。なのに、それなのに、何ゆえ7月14日なのですか?
編集者A(以下A):7月7日は、東京都知事選挙の開票特番で休止ということでしたからね。「人生とは思惑通りにいかないこともある」ということでしょう。まひろと道長の恋同然にどこかですれ違ってしまったのかもしれません。
I:驚いたのが、その「一夜の逢瀬」でまひろが懐妊という設定になっていたことです。私は、前週にまひろが宣孝(演・佐々木蔵之介)から贈られた鏡で自分の姿を映じていたシーンを思い出して、「もしや、まひろと道長の石山寺での一夜は、鏡の中で展開されている別世界の話?」というふうに思ったりしました(笑)。
A:「史実重視派」の人の中には、「道長の子を懐妊とは、いくらなんでも」と感じている人もいるかもしれませんが、私はこれはこれで「平安のリアル」を描いているように感じていて、劇中でも登場している居貞親王(演・木村達成/後の三条天皇)のエピソードを思い出してしまいます。
I:ああ、『大鏡』などにも描かれているあのエピソードですね。
A:道長の異母妹藤原綏子(やすこ/すいし)は、居貞親王の御息所として側に仕えていました。彼女は今回劇中には登場していませんが、親王とはそういう関係ではなかったようです。そうしたこともあったのか、藤原綏子は居貞親王と同じく村上天皇の孫である源頼定と密かに情を通じ、なんと懐妊してしまったといいます。
I:居貞親王からすれば、身に覚えのないのに綏子が懐妊するのはおかしいと異母兄の道長に調査を命じて、密通がばれたという話ですね。
【「平安時代は性に奔放」では言い表せない。次ページに続きます】