ひげちゃん演じる彰子の愛猫。実は名前があるのだ。
(C)NHK

ライターI(以下I):最近、倫子(演・黒木華)の愛猫小麻呂(演・ニモ)が登場しないなぁと思っていたんですが、そりゃそうですよね、倫子が小麻呂を飼っていたのは、道長(演・柄本佑)と結婚するより前からですから。

編集者A(以下A):ふたりが結婚したのは永延元年(987)年で、倫子24歳、道長22歳でした。翌年には彰子(演・見上愛)が生まれています。今ドラマで描かれているのは、その彰子の入内の頃ですから、長保元年(999)。小麻呂を最後に我々が見た時から、12年の歳月が経っていることになります。ドラマの中での小麻呂は立派な成猫でしたから、もう天寿をまっとうしていてもおかしくはありません。

I:現代の猫の平均寿命は15.66歳(ペットフード協会、令和3年)で、中には20歳以上も生きる猫もいますが、これは近年の猫の飼い方に対する意識の変化とか、フードの質の向上とか、医療の発展とか、いろいろ要因があるわけで、一昔前まではもっと短命だったと言われています。平安時代ともなると、キャットフードの総合栄養食なんてないですからね。『光る君へ』にはいろんな食べ物が登場して、そういうのを見るのも楽しいのですが、さすがに猫の食べ物までは出てきませんね。

A:倫子の曾祖父は第59代宇多天皇でした。宇多天皇は『寛平御記』という日記を書いていますが、その中に、父の光孝天皇から贈られたという黒猫のことを詳細に書いています。この猫はもともと、太宰大弐の源精が元慶8(884)年頃に光孝天皇に献上した、「唐猫」、つまり渡来の猫でした。光孝天皇は当時、まだ皇太子でもなく臣籍降下して源定省と名乗っていた後の宇多天皇にこの猫を下賜したところ、17歳だった宇多天皇はこの黒猫を大変かわいがったようです。これも、日本最古の猫に関する飼養記録といわれています。そこにちらっと、当時の猫が食べていたものが登場するんですよ。

I:それ、知ってます! 以前、宇多天皇の愛猫に関する記事を書いた時に調べたことがあります。(https://serai.jp/living/1011942)宇多天皇は、愛猫に「乳粥」を与えて大事に育てていたことが書かれているんですよね。

A:「迩宇能可遊(にうのかゆ)」とも書くんですが、これは平安時代中期に編纂された『倭名類聚抄』では「酪」として紹介されています。

I:はい。私、江戸時代の『和漢三才図会』をもとに再現してみたことがあるんです。平安時代と江戸時代とでは開きがありますが、おおよそこんなものだろうというのができあがりました。牛乳とヨーグルトの間みたいなのができましたよ。

A:当時としては乳製品は貴重だったと思うので、さすが天皇の猫ともなると違いますね。ちなみに、日記に自分の猫のすばらしさを延々と書いているんですが、なぜか名前は出てこないんですよね。なんて呼んでいたんでしょうね。

I:史実はわからないですが、ドラマの中での倫子が猫好きだったのは、血筋なのかもしれませんね。

新たな猫が登場。次ページに続きます

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