子どもの頃からのチーズ好きが高じて、チーズ工房を設立。多忙な一日は、今日もヨーグルトと果物の朝食から始まる。

【鶴見和子さんの定番・朝めし自慢】

前列から時計回りに、洋梨1/2個、ヨーグルト、グレープフルーツジュース、ミルクティー(砂糖なし)。グレープフルーツジュースは定番ではないが、気が向けば朝食に登場することもある。
朝食の果物は洋梨の他、バナナや缶詰の蜜柑なども登場する。缶詰の蜜柑は皮を剥いたり袋から取り出す手間がかからず重宝だ。また、旬の時季になれば桃もヨーグルトによく合うという。
店頭販売のある水曜・金曜・日曜は昼食の手作りカスクートを持って出勤。カスクートはハムと胡瓜(上)と卵と胡瓜の2種類。フランスパンは、カスクート用を購入すると便利だ。
食後のチーズ(ラ・ブリック、1個180~200g、3000円)と合わせるのは、「澤乃井 元禄酒」(下画像参照)。黄金色の中に300年の歴史を閉じ込めた濃醇な味わいで、特有な香りをまとったラ・ブリックとの相性がいい。
「澤乃井 元禄酒」(720ml)1540円。小澤酒造/東京都青梅市沢井2-770 電話:0428・78・8215
「チーズの仕込みのある日は午前5時起床、朝食は6時頃。そうでない日の朝食は8時頃です」と鶴見和子さん。いずれにしても睡眠は8時間を確保するように心がけているという。

東京都青梅市に小さなチーズ工房がある。『フロマージュ・デュ・テロワール』である。フロマージュとはフランス語でチーズのこと。テロワールとはその土地らしさほどの意味。店名に込めた思いを、店主の鶴見和子さんが語る。

「東京には酪農家さんが50軒ほどもあることから、東京と青梅という土地に思いを込めたチーズを作ろうと、この店名にしたのです。主原料の生乳や塩は東京産。ウォッシュタイプのチーズには青梅の酒蔵の日本酒を使っています」

チーズの製造に欠かせない乳酸菌も、生乳から自家培養する。青梅の名前を冠した看板商品の「フロマージュ・ドーメ」は、味噌や酒粕のような独特の風味が特徴だ。

看板商品の「フロマージュ・ドーメ」(1個150~180g、2200円)は、青梅『小澤酒造』の生酛造りの「元禄酒」を使ったウォッシュタイプ(※表面を塩水や酒などで洗いながら熟成させたもの。)で、味噌や酒粕のような風味がある。
熟成中の「フロマージュ・ドーメ」。食べ頃まで1か月ほどかかる。東京都地域特産品。

「その土地や工房に棲みついた“蔵つき菌”のようなものが、特有の風味を生み出してくれます」

東京・文京区に生まれた。高校卒業後はカメラマンを目指したが、挫折。子どもの頃からチーズが好きで、チーズショップで働くようになる。さらに、チーズのラベルが読みたいとフランスに語学留学。その滞在中に、面白そうだからと“ENIL”(フランスの乳製品専門学校)に入学し、その他でも修業。チーズ作りを始め、チーズに関するあらゆる知識と技術を学んだ。振り返れば、フランスでのチーズ修業は5年にも及ぶ。

フランス・パリのチーズ屋さんで研修をしていた頃、同僚と一緒に。フランス人にとってチーズとは何か、どのように売られているのかを知りたかったので、貴重な体験となった。

2010年に帰国。その4年後、56歳で設立したのが『フロマージュ・デュ・テロワール』である。

『フロマージュ・デュ・テロワール』は店頭のホルスタインが目印。東京都青梅市友田町2-677-102
電話:0428・78・3458 店頭販売は水曜・金曜・日曜の13時~17時。他に通販でも購入可。

主食の代わりとなる果物

チーズ工房店主の朝食は簡素だ。ヨーグルトをかけた果物にミルクティーという献立。今の朝食に落ち着いたのは、フランスから帰国してからだという。

「フランスでは寮生活だったので、いわゆる学食での朝食でした。パンにコーヒーか紅茶、ココアなどの飲み物、ちょっと気の利いた寮ならそれに果物かジュースが付く程度。今は主食のパンの代わりになるのが果物です」

幼少の頃から牛乳とプロセスチーズが大好きだった。ナチュラルチーズに出会ったのは高校生の時。初めて食べたのはフランスのチーズ「シュプレム」、30代でドイツのチーズ「カンボゾーラ」に衝撃を受けた。その時々を、チーズが彩ってくれた半生である。

ゆくゆくはチーズの学校を作り、知識と技術を後進に手渡したい

『フロマージュ・デュ・テロワール』では不定期ではあるが、チーズ教室を開講している。10数回目となるこの度の受講生はふたり。東京のワインスクールでチーズ講師を務める佐々木健治さんと、佐賀の嬉野で酪農業に携わる中島千明さんだ。佐々木さんがいう。

「チーズの知識はあるが、実際に作っている現場を見たかった」

中島さんも受講の動機を語る。

「大分で開かれた鶴見さんの講座に参加して以来、工房でのチーズ作りを見たいと思っていました」

チーズ教室でモッツァレラチーズの作り方を教える。右から鶴見さん、アシスタントの金澤翼さん、受講者の中島さん、受講者の佐々木さん。生乳に土着の乳酸菌を入れ、豆腐状に固まったカイエ(チーズの元になる凝乳)を作る。これを熱湯の中で練り、引きちぎって成形する。
出来上がったモッツァレラチーズは水に浸けて冷やす。鶴見さんの作るモッツァレラ(100g当たり594円)は山葵醤油で食すのがお勧め。土着の乳酸菌を使っているので、醤油と絶妙な相性だという。店頭販売のみ。

今回挑戦するのは、モッツァレラチーズ。午前9時から1時間ほどの講義があり、いよいよ実践。モッツァレラはフランスのチーズではない。鶴見さんはイタリアでモッツァレラの製造を学んだが、工房では少し作り方を変えている。

「試行錯誤の日々だけれど、それが面白いのです。チーズ作りにはロマンがあります」

午後1時にはモッツァレラが完成し、皆で試食。出来たてが美味しい。ゆくゆくはチーズの学校を作り、これまでに学んだチーズの知識や技術を、後進の人たちに手渡せれば嬉しいという。

熟成を待つラ・ブリック(1個180~200g、3000円)。『小澤酒造』の白糠から造った焼酎「武州伝説」で洗ったレンガ色のチーズで、独特な香りがあるウォッシュタイプ。
熟成を待つドーム(1個100g、1800円)。チーズを作る時に出るクリームを加えたまろやかなチーズで、2018年度のJapan Cheese Awards(ジャパンチーズアワード)金賞受賞チーズ。白ワインに合う。

※この記事は『サライ』本誌2024年3月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆)

 

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